フカフカなソファーに腰かけながら、僕はイオの隣で、静かに話を聞いていた。 凛音と里久の、辛くて悲しい、なんともやりきれない話を。僕がコスモスに乗って逃げた後の学校のこと、どうやってニ人が助かったのか。どうして旅を始めたのか。 淡々と……淡々と語られていく、もう一つの物語。 話す凛音の表情は、怒っている顔でも、悲しみの表情でもない。感情の読み取れない、真顔。普段感情が豊かな凛音からは信じられ…
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コスモス第2章12話「逃げた先にあったものは………」
暗い道。右も左も、上も下も真っ暗。 後ろの方、つまりは凛音と里久が入った入り口は、明るい。 そして、2人が向かう先に、小さく光がある。 まるでトンネルみたいに、この暗い空間は2つの光を繋いでいるのだ。 凛音も里久も、手を前に伸ばして、何か壁のようなものがないか探しながら歩いた。不安はあるものの、攻撃を受けた2人は感覚が少々麻痺しており、歩むことを止めなかった。 途中、なんとなく、光のあ…
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コスモス第2章11話「悲劇」
あの日。地球が破壊された日のお話。 自分たちが住んでいた世界を、街を、日常を、思い出を、跡形も無く消された日の記憶。 残酷で、悲惨な記憶。 「慶介!!」 親友を呼ぶ声は、爆音によってかき消され、本人に届くことはなかった。呼びかけた相手はすでに校庭から姿を消していた。その代わり見えたのは、そこにはあるはずのないもの。 校庭と言う、児童が遊んだり体育を行う際に使われたりする広場に、何故かレー…
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コスモス第2章10話「再開」
「お待ちしておりました」 指定された場所に着くと、1人の少女が礼儀正しく深々とお辞儀した少女がいた。 「あ、えっと。こんにちは?」 「こんにちは」 少女が顔を上げると、先日逢ったあの子だった。イオと死闘を繰り広げた時とは違って、今は白と黒を基調としたメイド服を着ている。黒く長い髪は相変わらず後ろで結ってポニーテールにしているけれど、メイドの姿をしているだけで、印象がガラリと変わった。あの時は、…
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コスモス第2章9話「どうすればいい」
列車にしてはお洒落で、落ち着く雰囲気のラウンジカーに、僕はイオと2人っきりだった。テーブルの上には朝食に用意されたサンドイッチと紅茶。イオの怪我が治ってから、まだ数時間ほどしか経っていない。 窓の外には、岩の壁。コスモスは未だ、渓谷の底で停車している。 コスモスの自己修復自体はとっくに終わっていて、いつでも発車できる状態だった。ただ、敵がどこに潜んでいるか分からない以上、無闇に発車できなくな…
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コスモス第2章8話「失うもの、得るもの」
薄暗く静かなファクトリー・カー。何かを創るために設置された機械たちは、動きを止め、じっと息を凝らしている。壁には照明とは違った光が所々に散在していているけれど、どれもこの部屋を照らすほどじゃない。僕は大きな円柱形の水槽を前で1人、立ち尽くしていた。 水槽の中は緑色の半透明な液体で満たされていている。そんな中、普通はあり得ないけれど、イオが一糸まとわぬ姿で浮かび、両脚を抱えるようにして眠っている…
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コスモス第2章7話「敗北」
装飾品を多く取り扱う店に並ばれた、鮮やかな品々を何度も何度も慎重に見比べた。棚に並べられた物の数々、どれも誰かに送るには最適そうに思えた。これなら、女性だけでなく男性もこの装飾品をつけて歩きたいと思うのではないのだろうか。 店の店主は中年ぐらいの女性で、やせ細ってはいたけれど血色はよく、ずっとニコニコして品を選ぶ僕を見守ってくれていた。 こういう飾りの良し悪しが分からない僕は悩みに悩んだ後で…
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コスモス第2章6話「街中で」
街は賑やかだった。装甲車は関所に預けることとなり、僕とイオは車から降りて、街の中心を歩いていた。フランシスさんの言っていた通り、この世界で稀に異世界人が来るということで、関所の警備兵は僕らを見ても特別表情を変えたようには見えなかった。ただ、どこの世界から来たか不明な僕たち異世界人は、本来なら入国手続きに二日ほどかかるところだったのだけど、商人を助けたという報告と、フランシスさんの紹介になり、一時…
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コスモス第2章5「最強の女騎士」
イオはその細い身体で善戦した。盗賊たちは連携して2人や3人で刀を振っていたが、どれも彼女を捉えることが出来なかった。槍を振る人もいたけれど、イオはその槍を相手から奪いとると両手で槍を握り、膝で折って真っ二つにしてしまった。比較的、僕らの近くにいて、馬車を囲っていた盗賊たちも仲間を助けるため、イオの方へ向かった。 彼女は武器を持っている相手に怯むこともなく、どんどんなぎ倒してしまう。紅い瞳のまま…
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コスモス第2章4話「知らない世界で」
心を明るくしてくれるような澄み渡った青空の下、雄大な山々の麓に長く深い渓谷があった。人間の文明や化学の力が及ばない、大自然の中に明らかに不自然な人工物が鎮座している。渓谷の底には川が流れており、ギリギリ着水しない高さでコスモスが停車しているのだ。 僕は発令所で各モニターをチェックしながら、コスモスに命じた。 「コスモス、損傷した箇所を確認、自己修復して。それと装甲車の準備をお願い。修理してる間…