翌朝、窓から太陽の日が差し込み、電線やら電柱やらの影が徐々に伸びてきた。 奏汰が目を覚ますと、頬に乾いた感覚。 身体を起こして、そっと頬を触ってみるが、何も無い。 「朝、か」 昨日は夕飯を食べていないし、お風呂にも入っていない。そのまま眠りこんでしまったのだ。 はっきりとしない頭のまま、ベッドから降りて、自室から廊下に出た。さすがにずっと同じ下着にYシャツは不快感があるので、奏汰はとりあ…
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ヴァ―レ・リーベ 第14話「失ったもの」
白い壁と焦げ茶色の木目調の屋根はくっきりと色と色と分けているお寺のとなりの駐車場では車が数台止まっていた。その中には黒くて前後に長い霊柩車が待機していた。 寺への入り口となる門の上には、漆黒の羽に身を包んだカラスがじっと、お寺の方を見ている。 不気味なその姿に加えて、人気のない木々が風で揺れ、怪しい音を奏でているから、一種のホラー映画のような緊張感と冷たさを与えている。 普段であれば静かで…
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ヴァ―レ・リーベ 第13話「朝」
フライアが隠れる森から奏汰は1時間ほど走って、ようやく家に着いた。 夕飯も朝ごはんも食べず、しかも起きてそう時間が経っていないものだから、奏汰の視界はグニャリと曲がり、息が切れ、心臓がドキドキと脈打ち、汗で身体が濡れている。 膝にとついて息を整えて、やっとのことで顔を上げると、そこにあったのは奏汰の家と、大きな穴が開いて「KEEP OUT」と黒字で書かれた黄色いテープが何重にもなって張られた…
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ヴァ―レ・リーベ 第12話「声」
朝。小鳥たちの楽しそうなさえずりがあっちこっちから聞こえてくるが、その姿は見えない。 きっと木の葉に隠れて遊んでいるか、餌を探しているのだろう。 ここは街の端にある森。普段、あまり人が立ち入らない場所。しかし今日は、そんな自然の中にそぐわない影が、そこにはあった。厚く頑丈な装甲に身を包んだロボット、フライアが、木に身を潜めている。 フライアの暗いコックピットの中で、奏汰の寝息がゆったりとし…
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ヴァ―レ・リーベ 第11話「託されたもの」
━━━慟哭。 奏汰は、幼馴染の亡骸のすぐそばで、膝をつき、悲しみに涙を流し、声を張り上げて泣いている。 「うぅ………あぁッ!……ああッ!」 胸が、心臓が切り裂かれるように痛い。心が痛い。苦しい。まるで自分も彼女の後を追ってしんでしまいそうだ。 ずっと伝えたかった想いを、彼女に伝えた。 いつも聞きたかった言葉を、彼女から聞いた。 それなのに、奏汰の心は満たされない。行き場なのない悲しみで…
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ヴァ―レ・リーベ 10話「死別」
薄く黄色い光は、太く、真っ直ぐと敵のロボットへ向けて宙を駆けた。 その光にほんの少し遅れて、凄まじい轟音が辺りの空気や地面を揺らした。 それまでそこにあったはずの丘は、原型を留めておらず半円形にえぐり取られており、しかも土がすっかり焦げてしまっていた。焦げた土の所々は赤く、未だ灼熱であり続けている。 対して問題のロボットは原型を留めている。 しかし、地面を抉り取るような威力の砲撃に耐える…
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ヴァ―レ・リーベ 第9話「やるべき事」
幸い敵は鈍足らしく、敵影は無かった。 もしかしたら身を潜め、どこからか狙撃をしようとしていない限りは、まだ安全な地だった。 友里はフライアの肩に立ち、辺りを確認した。 戦闘を行うとすれば、ここの広さは十分であり、また閉演時間を超えているため、人は少ない。 職員はいるだろうが、少し離れたところに事務所があり、直接的な被害は考えづらい。 迎え撃つならここである。 下で人間の胴体ぐらいの太…
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ヴァ―レ・リーベ 第8話「判断できない」
「私は、2週間で日本語を理解した。必要だったから……………。それからは奏汰が知っての通り、毎日実験やら研究やらを繰り返してきたの」 奏汰は友里の言葉の一つ一つに注意深く、静かに聞いていた。いやむしろその信じがたい話に口を開き、声を失っていたとした方が正しいかもしれない。 全てを理解し信じろと言われても、こんな話簡単に飲み込めるような内容ではなかった。 が、一方で友里の今までの言動や、実験や研…
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ヴァ―レ・リーベ 第7話「ロボット」
奏汰と友里は見つめ合った。 片方は困惑の表情、もう片方は覚悟を決めた表情。 先ほどまで2人きりで静かだったはずのラボには、危険を知らせる警報が鳴り響いている。それは壁に掛けてある時計が、チッチッチッと秒針を鳴らし「時間が無い!急げ!」と必死に伝えようとしているのに、その音すらかき消してしまう。 実際、2人には猶予は残されていなかった。こうしている間にも武装した男たちは家の周りに静かに囲い込…
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ヴァ―レ・リーベ 第6話「彼女は何か知っている」
茶色いドアの銀色に輝くドアノブを握り玄関を開けると、誰かがフローリングを走っているのか激しい足音がした。 その音は段々と近づいて来ており、遂には何やら慌ただしく玄関に繋がる階段をドタドタと駆け下りてくる、白衣姿の友里が姿を現した。 「ただいま」 「あ!おかえりー。って家は奏汰の家じゃないんですけど」 奏汰がリュックを背負ったまま、直接友里の家に来たことに抗議をした。 「いや、もう直接来た方が…