「クラスで、根も葉もない変な噂が立っているのは、古谷も知っているな?」 奏汰や友里のクラス担任である佐藤先生は、他の教師たちが忙しく雑務をこなしている職員室に奏汰をお呼びだし、出来るだけ穏やかに務めて、話を切り出した。 「………はい。今朝、ニュースでやってた、工場が爆発して、それがロボットの襲撃のせいじゃないかって話ですよね。それを友里がやったって。でも俺はあいつがそんなことをしないと思っていま…
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ヴァ―レ・リーベ 第4話「異変」
次の日の朝、奏汰は友里の家へ行き、玄関に入ると彼女はダボダボな白衣を着たままラボで寝ていた。スヤスヤと可愛い寝息を立てている彼女を起こすと、寝ぼけたまま手をひらひらと振って、「研究がしたい」と言い出した。こういう時、小黒友里という人間は梃子でも動かない。仕方なく学校には体調不良という名目で休む旨を電話で、奏汰が伝えなければいけなくなった。というのも、彼女の親はこの日は帰ってこない日であり、彼は親…
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ヴァ―レ・リーベ 第3話「秘密」
他よりも大きな白い家の黒い表札には小黒と掘られており、その家の中のリビングではカチャカチャとフォークと食器が軽い音が、踊るように両サイドからなっていた。 リビングはラボの隣にある、比較的片付いていて、尚且つずっと小さい部屋で、テーブルにパスタやスープが彩られて置かれた食器が並び、近くの椅子には友里と奏汰が向かい合って座っている。今夜の夕飯は家に家族がいなく、また家事が不得意な友里のために、奏汰…
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ヴァ―レ・リーベ 第2話「研究室」
杉田高等学校の校舎には約1000人もの生徒が、40人ごとに教室に入り、自分たちの席に座り、教科書を広げノートを広げ、教師によって行われる授業を聞いて、必要であればメモを取るし、指示があれば問題を解いている。 しかし一般的で真面目で優秀な大多数の生徒が、教師の理想とする授業態度をとるのに対して、少数の生徒はそうではなかった。ある者は、教師にバレないように教科書を立て、持ってきていたお弁当のおかず…
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ヴァ―レ・リーベ 第1話「天才少女」
街。平穏な街。大勢の人間が、アスファルトをも焼いてしまいそうな朝日に見守られながら、しかし見守られていることなど露ほども知らず、スマホやら携帯電話やらを見るために下を向いて歩いている。どこを見ても大勢の人の群れ、動かない車の列、何度も行きかう電車、広い空に独特な機械音で存在感を隠そうとしない飛行機。誰もが忙しい。そんな息苦しく、物々しい風格とは無縁な街。都会とは少し離れている街。 この街には特…