心を明るくしてくれるような澄み渡った青空の下、雄大な山々の麓に長く深い渓谷があった。人間の文明や化学の力が及ばない、大自然の中に明らかに不自然な人工物が鎮座している。渓谷の底には川が流れており、ギリギリ着水しない高さでコスモスが停車しているのだ。 僕は発令所で各モニターをチェックしながら、コスモスに命じた。 「コスモス、損傷した箇所を確認、自己修復して。それと装甲車の準備をお願い。修理してる間…
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コスモス第2章3話「亜光速」
普段のコスモスでは起こり得ない振動に立つことも出来ず、座席にしがみついていた。僕の周りに配置された座席たちがカタカタと恐怖に震えあがっていた。 異常。 それが今もっともふさわしい言葉だった。しかもGまでかかっていて、車両後方に身体が持っていかれそうになっている。こんな事があったのは過去に一回。ハンザの世界での戦闘で、今回のように前進一杯をだした時だ。でもあの時はとても短い時間だったから、こん…
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コスモス第2章2話「見えない襲撃者」
それは突然の出来事だった。 僕もイオも、目の前で起こっていることに思考が追いつかず、ただ固まっているしかなかった。 なに!?なにが起こっているの!? まるで頭の中に分厚い凍りが張りついているように、何も考えることが出来ない。 焦り、不安、恐怖。 そんな中、コスモスから再び報告を受けた。 「三時の方向、巡行ミサイル接近中。距離3000。着弾まで20秒」 ミサイル!? 窓ガラスに表示さ…
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コスモス第2章1話「それは突然に」
無限に広がる、世界と世界を繋ぐ超空間。 上も下も右も左もない、ただひたすら何もない超空間。 まるで絵具のパレットに、黄緑色や水色やピンクや赤色や青色の絵具を混ぜたような模様が、四六時中うごめいている。 それはまるで夢の世界にも似ている。 そんな空間に不釣り合いな、旧式な蒸気機関車が走っている。 汽車は長く力強い汽笛を、まるで魂の歌のように響かせながら、空間をも揺るがす勢いで走っている。…
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コスモス最終回「新たなる旅立ち」
空は薄く明るくなっており、青空は見えているのに太陽はまだ昇っていない。 コスモスは少し長い汽笛を二回、長い汽笛を一回鳴らした。 これは本当なら車掌を呼び出すための汽笛合図だけど、今回は僕に準備が出来たことの合図だろう。 大人の身長よりも遥かに大きい動輪の元まで行き、その巨体を見上げてみた。 煙突からは白い煙が上がっていいき、まるで青い空に溶け込んでいくようだった。 「自己修復100%完了…
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コスモス第二十五話「また別の場所での戦い」
コスモスは敵艦の中の大きな部屋で停車した。 そこには装置やモニターが多くあり、またこの場にいる十数人の乗組員の中で他の誰とも服装が違っていて、帽子もしている男が見えた。 どうやら彼はこの艦の艦長のようで、ちょうど敵艦の艦橋で停車できたようだ。 艦長は静かにこちらを見据えている。 中央のモニターで確認する限り、他の下級の乗組員は戸惑いながらもこちらに銃を向けて、ある者は発砲している。 ロ…
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コスモス二十四話「出撃」
いつも部屋の中を明るく照らしてくれる照明は消え、非常灯とモニターの明かりだけが頼りとなった。 これから、本物の戦いが始まる。 そう、本物の戦いが……。 その事実に段々と心臓の音が大きくなり、背中からは汗が滲む。 「機関出力、上昇。反転します」 「……なんとか相手を止められるかな」 「マスターが望むなら」 「心強いね」 「私はマスターの列車ですから」 「うん」と僕はうなずくと、ふいに視線を感…
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コスモス二十三話「必ず救ってみせる」
そこから降りてきたのは慶介とイオ。 「何で……何で来たんだ!慶介!!」 俺は叫んだ。 しかし、慶介の表情は真剣そのもので、こちらに視線を送り、まるで「大丈夫」と言っているだった。 2人が数歩歩くと、突如として戦闘員の誰かがイオの元に棒状のものを投げ、半透明の緑色のドームのようなものが展開された。 それにはイオも慶介も驚いていた。 「あれは……」 「猛獣向けに作られた携帯用捕獲障壁だ。ちょ…
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コスモス第二十二話「人質」
「旅立つなら、明日がいい」とハンザは言って、白いコップに入ったお茶を一口啜った。 お別れに最後の夕飯をとった僕らは、大きな窓のそばにある、紫色のソファーに腰かけてゆっくりしている。 外はもうすっかり暗くなっていて、水色の月の光が夜空に浮かぶ雲を照らし出していた。 今まで気が付かなかったけど、この世界の月は地球で見た月よりもずっと大きく、模様がはっきりと見える。 もしかしたらこの地上に月が落…
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コスモス第二十一話「夕食」
僕はイオの手を引いて廊下に出ると、先ほどの部下の人が後ろで制止しているのも聞かづずに歩き続けた。 後ろで何か話し声や、叫ぶ声が聞こえたけど、それもすぐに止んだ。 僕らは気にせずに、歩み続ける。 「ごめんね、イオ。嫌な思い、させちゃったよね」 「私は大丈夫ですよ。安心してください」 イオはどこか嬉しそうに、笑顔で答えた。 さっきまでと違って、なんだか安心したような心地だった。 二人を道具…