「お待ちしておりました」 指定された場所に着くと、1人の少女が礼儀正しく深々とお辞儀した少女がいた。 「あ、えっと。こんにちは?」 「こんにちは」 少女が顔を上げると、先日逢ったあの子だった。イオと死闘を繰り広げた時とは違って、今は白と黒を基調としたメイド服を着ている。黒く長い髪は相変わらず後ろで結ってポニーテールにしているけれど、メイドの姿をしているだけで、印象がガラリと変わった。あの時は、…
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コスモス第2章9話「どうすればいい」
列車にしてはお洒落で、落ち着く雰囲気のラウンジカーに、僕はイオと2人っきりだった。テーブルの上には朝食に用意されたサンドイッチと紅茶。イオの怪我が治ってから、まだ数時間ほどしか経っていない。 窓の外には、岩の壁。コスモスは未だ、渓谷の底で停車している。 コスモスの自己修復自体はとっくに終わっていて、いつでも発車できる状態だった。ただ、敵がどこに潜んでいるか分からない以上、無闇に発車できなくな…
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コスモス第2章8話「失うもの、得るもの」
薄暗く静かなファクトリー・カー。何かを創るために設置された機械たちは、動きを止め、じっと息を凝らしている。壁には照明とは違った光が所々に散在していているけれど、どれもこの部屋を照らすほどじゃない。僕は大きな円柱形の水槽を前で1人、立ち尽くしていた。 水槽の中は緑色の半透明な液体で満たされていている。そんな中、普通はあり得ないけれど、イオが一糸まとわぬ姿で浮かび、両脚を抱えるようにして眠っている…
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コスモス第2章7話「敗北」
装飾品を多く取り扱う店に並ばれた、鮮やかな品々を何度も何度も慎重に見比べた。棚に並べられた物の数々、どれも誰かに送るには最適そうに思えた。これなら、女性だけでなく男性もこの装飾品をつけて歩きたいと思うのではないのだろうか。 店の店主は中年ぐらいの女性で、やせ細ってはいたけれど血色はよく、ずっとニコニコして品を選ぶ僕を見守ってくれていた。 こういう飾りの良し悪しが分からない僕は悩みに悩んだ後で…
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コスモス第2章6話「街中で」
街は賑やかだった。装甲車は関所に預けることとなり、僕とイオは車から降りて、街の中心を歩いていた。フランシスさんの言っていた通り、この世界で稀に異世界人が来るということで、関所の警備兵は僕らを見ても特別表情を変えたようには見えなかった。ただ、どこの世界から来たか不明な僕たち異世界人は、本来なら入国手続きに二日ほどかかるところだったのだけど、商人を助けたという報告と、フランシスさんの紹介になり、一時…
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コスモス第2章5「最強の女騎士」
イオはその細い身体で善戦した。盗賊たちは連携して2人や3人で刀を振っていたが、どれも彼女を捉えることが出来なかった。槍を振る人もいたけれど、イオはその槍を相手から奪いとると両手で槍を握り、膝で折って真っ二つにしてしまった。比較的、僕らの近くにいて、馬車を囲っていた盗賊たちも仲間を助けるため、イオの方へ向かった。 彼女は武器を持っている相手に怯むこともなく、どんどんなぎ倒してしまう。紅い瞳のまま…
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コスモス第2章4話「知らない世界で」
心を明るくしてくれるような澄み渡った青空の下、雄大な山々の麓に長く深い渓谷があった。人間の文明や化学の力が及ばない、大自然の中に明らかに不自然な人工物が鎮座している。渓谷の底には川が流れており、ギリギリ着水しない高さでコスモスが停車しているのだ。 僕は発令所で各モニターをチェックしながら、コスモスに命じた。 「コスモス、損傷した箇所を確認、自己修復して。それと装甲車の準備をお願い。修理してる間…
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コスモス第2章3話「亜光速」
普段のコスモスでは起こり得ない振動に立つことも出来ず、座席にしがみついていた。僕の周りに配置された座席たちがカタカタと恐怖に震えあがっていた。 異常。 それが今もっともふさわしい言葉だった。しかもGまでかかっていて、車両後方に身体が持っていかれそうになっている。こんな事があったのは過去に一回。ハンザの世界での戦闘で、今回のように前進一杯をだした時だ。でもあの時はとても短い時間だったから、こん…
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コスモス第2章2話「見えない襲撃者」
それは突然の出来事だった。 僕もイオも、目の前で起こっていることに思考が追いつかず、ただ固まっているしかなかった。 なに!?なにが起こっているの!? まるで頭の中に分厚い凍りが張りついているように、何も考えることが出来ない。 焦り、不安、恐怖。 そんな中、コスモスから再び報告を受けた。 「三時の方向、巡行ミサイル接近中。距離3000。着弾まで20秒」 ミサイル!? 窓ガラスに表示さ…
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コスモス第2章1話「それは突然に」
無限に広がる、世界と世界を繋ぐ超空間。 上も下も右も左もない、ただひたすら何もない超空間。 まるで絵具のパレットに、黄緑色や水色やピンクや赤色や青色の絵具を混ぜたような模様が、四六時中うごめいている。 それはまるで夢の世界にも似ている。 そんな空間に不釣り合いな、旧式な蒸気機関車が走っている。 汽車は長く力強い汽笛を、まるで魂の歌のように響かせながら、空間をも揺るがす勢いで走っている。…