僕とイオはコスモスで朝食を食べて、身支度を整えてからハンザの家に来ていた。 建物の外にはベンチがあって、ハンザと二人で座った。 暖かく湿った風が優しく頬を撫でている。 青く澄み渡った空に浮かぶ白い雲は緑色の山々に影を落としている。 平和な景色だった。 「今日はどうするつもり?」とハンザはゆっくりと口を開き訊いてきた。 「今日はコスモスに乗って遠くの方で情報探してみるつもり。それが終わった…
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コスモス 第十九話「車内」
森での居心地に耐えられなくなった僕たちは明日また会うことを約束して、ハンザとイシカは二人の家へ、僕とイオはコスモスへそれぞれの帰る場所に帰ることにしたのだった。 帰る途中、僕達四人は悲しみに暮れ誰一人として話す者はいなかった。 僕はコスモスの浴室のシャワーで体に着いたの汚れを落としながら、その事を思い出していた。 シャアアアアアというお湯の吹き出る音以外は何も聞こえず。ただひたすら自分の思…
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コスモス 第十八話「約束」
「慶介さん、イオさん、少しお出かけしませんか?」 あの惨劇があった日から二日後、唐突にイシカにそう誘われ、僕たちは雲がいくつか浮かぶ青空の中、ハンザの家から少し離れた森のあるところにやって来ていた。 ここら辺はコスモスや装甲車で来たことは無く、まったく新鮮だった。 どこを見回しても青い葉が覆い茂った木々や、苔の生えた岩があり、鳥の声や草や小枝を踏む音以外は静かだ。 なんだかこの森に吸い込ま…
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コスモス 第十七話「救助活動」
街に引き返してみると、崩壊した建物のから少し離れたところにさっきまでは無かった黄色い船が停泊していた。ハンザ曰く救護用の船らしい。 コスモスから降りてみると、緑色の服やズボンを身に着けた救急隊らしい人達が、慌ただしく瓦礫だらけになった道を駆け回っていて、血まみれになって倒れた人を拭く数人で運んだりしていた。 僕とハンザ、イオは並んでただ呆然と立ち尽くしていた。 「船の数が足りねぇ……。このま…
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コスモス 第十六話「戦うという事」
その船は異様だった。禍々しい外観もそうだけど、威圧すように街の上を低く飛んでいる。 「普段この辺をよく飛んでるの?」と、揺れる車内で僕は訊いた。 「いや、見たことないよ。何かを運んでる…?」と、考え込むような素振りを見せながらハンザは答えた。 何故か、冷や汗が肌を伝う。 エンジン音が響き、周りの景色がどんどん流れていく。 ようやく街にたどり着く頃には、街にいる人々は船を見上げていた。 装…
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コスモス 第十五話「田舎道」
ブラインドの隙間から陽の光が差し込み、目が覚めた。 薄っすらと、白い天井が目に入った。 「ここは……?」 僕は少し体を起き上がらせ、薄暗い部屋で、霧がかかったように安定しない頭の中をゆっくりと整理する。 そうか、ハンザの家に泊まってたんだっけ。 昨日のことを思い出しながら身の回りを見ると、隣でイオがすぅすぅと、気持ちよさそうに眠っている。 その姿に僕の心臓は大きく跳ねて、眠気が一気に吹…
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コスモス 第十四話「お泊り」
夕方、コスモスの戦闘指揮所で、今夜はハンザの家に泊まることをコスモスに伝えた。 「分かりました。着替え等必要な物を生産車両にてご用意します」 「うん、ありがとう。コスモス」 素直にコスモスにお礼を言うと、中央のモニターに表示されたリングが点滅した。 「ご主人様。私は先に、必要な物を取りに行ってきますね」 そう言うと、イオは後ろの車両に移動した。 コスモスに長く間いたイオの方が、生活に必要な…
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コスモス 第十三話「噂」
遠くまで響きわたるような力強い汽笛を鳴らしながら、コスモスはいつもよりゆっくりと上空を走る。 僕らは今、ハンザの家に帰る途中に展望デッキに出て、ハンザの町を軽く案内してもらっているのだ。 「あ!あれが一番見晴らしのいい丘で、たまにピクニックにいくんだよ」 手すりにつかまりながら、ハンザ指さして教えてくれた。 「ハンザさん、あれは何をしているんですか?」 下を覗き、興味津々に訊ねるイオ。 …
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コスモス 第十二話「ハンザの世界」
どこまでも続く広大な超空間、或いは世界と世界を繋ぐ無限のトンネル。 コスモスはその中を、時々汽笛を鳴らし、ハンザの船を牽引しながら走っている。 ハンザの元いた世界は、航行不能になったところからそこまで遠くないらしいけど、波の影響で遠回りすることになった。 特にやることのない僕らは、戦闘指揮所で、お互いの世界について話していた。 中央の座席に僕、ハンザは左前の座席、イオは右前の座席に、それ…
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コスモス 第十一話「新しい友達」
指定された起床時間に、私はご主人様のお部屋の前に立っていました。 起こすようにご命令されていますから、コンコンと軽くノックをしてからお部屋に入ります。 お部屋の中はカーテンの隙間から漏れる細い光以外は薄暗く、ご主人様の息遣いが聞こえるほど静かです。 私は真っ先に窓の方へ行くと、カーテンを開けてお部屋の中に光を取り入れました。少し、眩しいです。 「ご主人様、七時間経ちましたよ。起きてください…