空は薄く明るくなっており、青空は見えているのに太陽はまだ昇っていない。 コスモスは少し長い汽笛を二回、長い汽笛を一回鳴らした。 これは本当なら車掌を呼び出すための汽笛合図だけど、今回は僕に準備が出来たことの合図だろう。 大人の身長よりも遥かに大きい動輪の元まで行き、その巨体を見上げてみた。 煙突からは白い煙が上がっていいき、まるで青い空に溶け込んでいくようだった。 「自己修復100%完了…
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コスモス第二十五話「また別の場所での戦い」
コスモスは敵艦の中の大きな部屋で停車した。 そこには装置やモニターが多くあり、またこの場にいる十数人の乗組員の中で他の誰とも服装が違っていて、帽子もしている男が見えた。 どうやら彼はこの艦の艦長のようで、ちょうど敵艦の艦橋で停車できたようだ。 艦長は静かにこちらを見据えている。 中央のモニターで確認する限り、他の下級の乗組員は戸惑いながらもこちらに銃を向けて、ある者は発砲している。 ロ…
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コスモス二十四話「出撃」
いつも部屋の中を明るく照らしてくれる照明は消え、非常灯とモニターの明かりだけが頼りとなった。 これから、本物の戦いが始まる。 そう、本物の戦いが……。 その事実に段々と心臓の音が大きくなり、背中からは汗が滲む。 「機関出力、上昇。反転します」 「……なんとか相手を止められるかな」 「マスターが望むなら」 「心強いね」 「私はマスターの列車ですから」 「うん」と僕はうなずくと、ふいに視線を感…
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コスモス二十三話「必ず救ってみせる」
そこから降りてきたのは慶介とイオ。 「何で……何で来たんだ!慶介!!」 俺は叫んだ。 しかし、慶介の表情は真剣そのもので、こちらに視線を送り、まるで「大丈夫」と言っているだった。 2人が数歩歩くと、突如として戦闘員の誰かがイオの元に棒状のものを投げ、半透明の緑色のドームのようなものが展開された。 それにはイオも慶介も驚いていた。 「あれは……」 「猛獣向けに作られた携帯用捕獲障壁だ。ちょ…
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コスモス第二十二話「人質」
「旅立つなら、明日がいい」とハンザは言って、白いコップに入ったお茶を一口啜った。 お別れに最後の夕飯をとった僕らは、大きな窓のそばにある、紫色のソファーに腰かけてゆっくりしている。 外はもうすっかり暗くなっていて、水色の月の光が夜空に浮かぶ雲を照らし出していた。 今まで気が付かなかったけど、この世界の月は地球で見た月よりもずっと大きく、模様がはっきりと見える。 もしかしたらこの地上に月が落…
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コスモス第二十一話「夕食」
僕はイオの手を引いて廊下に出ると、先ほどの部下の人が後ろで制止しているのも聞かづずに歩き続けた。 後ろで何か話し声や、叫ぶ声が聞こえたけど、それもすぐに止んだ。 僕らは気にせずに、歩み続ける。 「ごめんね、イオ。嫌な思い、させちゃったよね」 「私は大丈夫ですよ。安心してください」 イオはどこか嬉しそうに、笑顔で答えた。 さっきまでと違って、なんだか安心したような心地だった。 二人を道具…
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コスモス 第二十話「二人は僕が守る」
僕とイオはコスモスで朝食を食べて、身支度を整えてからハンザの家に来ていた。 建物の外にはベンチがあって、ハンザと二人で座った。 暖かく湿った風が優しく頬を撫でている。 青く澄み渡った空に浮かぶ白い雲は緑色の山々に影を落としている。 平和な景色だった。 「今日はどうするつもり?」とハンザはゆっくりと口を開き訊いてきた。 「今日はコスモスに乗って遠くの方で情報探してみるつもり。それが終わった…
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コスモス 第十九話「車内」
森での居心地に耐えられなくなった僕たちは明日また会うことを約束して、ハンザとイシカは二人の家へ、僕とイオはコスモスへそれぞれの帰る場所に帰ることにしたのだった。 帰る途中、僕達四人は悲しみに暮れ誰一人として話す者はいなかった。 僕はコスモスの浴室のシャワーで体に着いたの汚れを落としながら、その事を思い出していた。 シャアアアアアというお湯の吹き出る音以外は何も聞こえず。ただひたすら自分の思…
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コスモス 第十八話「約束」
「慶介さん、イオさん、少しお出かけしませんか?」 あの惨劇があった日から二日後、唐突にイシカにそう誘われ、僕たちは雲がいくつか浮かぶ青空の中、ハンザの家から少し離れた森のあるところにやって来ていた。 ここら辺はコスモスや装甲車で来たことは無く、まったく新鮮だった。 どこを見回しても青い葉が覆い茂った木々や、苔の生えた岩があり、鳥の声や草や小枝を踏む音以外は静かだ。 なんだかこの森に吸い込ま…
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コスモス 第十七話「救助活動」
街に引き返してみると、崩壊した建物のから少し離れたところにさっきまでは無かった黄色い船が停泊していた。ハンザ曰く救護用の船らしい。 コスモスから降りてみると、緑色の服やズボンを身に着けた救急隊らしい人達が、慌ただしく瓦礫だらけになった道を駆け回っていて、血まみれになって倒れた人を拭く数人で運んだりしていた。 僕とハンザ、イオは並んでただ呆然と立ち尽くしていた。 「船の数が足りねぇ……。このま…