八月の上旬、午後五時。日はもう沈みかけていて、僕の住んでいる街は綺麗な薄いオレンジ色に染められていた。 僕とイオは今、家の前で凛音と里久が来るのを待っている。 最近はコスモスやイオと会ってばかりで、里久たちと遊んでいなかった。 さすがに里久たちとも遊びたいと思ったので今日はイオも連れて、街で行われる花火大会に行くことにした。 事前に二人には、イオは遠い親戚の子ということで説明してある。…
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コスモス 第五話「ゲーム」
チョコを食べ終った僕らは空調設備の整った車内で、フカフカな、座れば腰が沈み込むようなソファーでのんびりとくつろいでいた。 不意に「ふあぁぁ」とあくびが出てしまった。 やっぱり、このソファーは眠気を誘う気がする。 まずい……段々と瞼が重くなってきた。 このまま眠ったら…。 「ご主人様?」 その声でハッとし、横を向くと、イオが顔を覗かせていた。 「ああ、ごめんね。ちょっと眠くなっちゃってた…
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コスモス 第四話「共有する時間」
イオを着替えさせた後、僕らはコスモスの最後尾車両まで歩いてまわった。 列車は長く、設備も多かったため意外と時間がかかった。 コスモス編成は、前から機関車、戦闘指揮所、一つ目の戦闘車両、客車、二つ目の戦闘車両、機関車という順番になっていて、二つ目の戦闘車両の主砲は後ろを向いているのが確認できた。 どうやら前の主砲は前方、後ろの主砲は後方を攻撃できるようになっているらしい。 列車全体をまわっ…
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コスモス 第三話「人造少女」
田舎から帰った次の日、カーテンの隙間から差し込む光が顔に当たり、目が覚めた。 耳を澄ますと、外から小鳥のさえずりが聞こえ、心が澄んだような気分になる。 僕はあくびをしながら床に足をつき、ベッドを降りて、掛布団を整えた。 カーテンを開けると、窓の外には綺麗な青空と雲が幻想的に輝いていた。 こういう日の朝は、なんだか心地良く、今日一日が上手く行くような気がする。 さて、と僕はその景色を後に…
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コスモス 第二話「出逢い」
片側だけで六つの動輪がある、見たことの無いほど巨大な蒸気機関車だ。色は顔が銀色に塗装されていて、それ以外は黒かった。特徴的な煙室ドアには、プレートの代わりに二つの八角形の板が横に並んで付いていて、その下に大きなスカートがあった。 おかしいのは、機関車と炭水車の後ろだ。 車両の側面と屋根の上に戦艦であるような三連装の主砲に似たものが付いている車両が連結されているのだ。 いわゆる、戦闘車両…
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コスモス 第一話「不思議な体験」
七月。夏休みのある日。僕は今、親戚の家の近くにある山の中へ、一人で入っていた。 夏休み初日から数日、三泊四日で僕は母さんの親戚の家に家族で遊びに来ていてた。 周りには田や畑ばかりで、隣の家に行くのにちょっと歩いたり、コンビニがなかなか無かったり、電車が三十分に一本の田舎である。 山に囲まれていて、景色はとても綺麗だ。 本当ならお盆に帰る予定だったけど都合が合わなくて、夏休みが始まってすぐ…
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コスモス 序章「日常」
たまに、現実世界(ここ)とは別の世界があるんじゃないかと思うことがある。 目の前にあるこの世界じゃなくて、空の遥か向こうの星に、違う文明あるんじゃないか。 或いは、認識出来ていないだけで、違う次元にもう一つの世界が広がっているのではないだろうか。 最近のアニメや漫画では、よく異世界召喚や異世界転生なんてものがある。 僕が、もしも異世界に行けたら、なんてことをつい考えてしまう…
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E D・♪いつかは死ぬほど愛したい
1.出逢った人の数 憶えては いないけれど 私の運命は いつも 誰かに 揺すられていた 夢の彼方の 王子様 現世(うつしよ)の恋人(あなた) いつかは終わる この恋は 心を 怯えさせる あなたと一緒に死にたい 永遠が愛を守るよう あなたと一緒に死なせて この手に 鋭小刀(ナイフ)を 握りしめて 紅(あか)く染めて風の中で二人 煌(きら…
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S c e n e7・未 完(これから)
ピンボーン♪ と門の呼鈴(チャイム)を鳴らす。 すると、小時(しばらく)してから、なんの返事も無しに玄関の押戸(ドア)が開いて、命くんが顔を出した。 私は、ニコッと微笑んで小さく手を振った。 二人とも今日から、二週間ぶりの学校。 勿論、一緒に行こうって誘ったのは私。 命くんが門を出ると途端(すぐ)に、私は命くんの手を取って、トットコ歩き出した。 あの日───、病院で目を醒ました私の目…
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S c e n e6・復 活(いきてかえる)
「………これが………、これが命くん…なんですか………? この光の球が、命くんなんですか!?」 制服の胸元と左の袖口を自分の血で染めた私は、跼坐(しゃが)んで、排球(バレーボール)くらいの大きさの光の球を両手で抱えた。 光の球は鋭い眩しさじゃない、優しくて柔らかい光を発(だ)している。 そして光の球を胸に抱くと、確かに命くんを感じた。 臆病な、けれども温かい命くんを。 私は、さっき尋ねた、…