どこまでも続く広大な超空間、或いは世界と世界を繋ぐ無限のトンネル。 コスモスはその中を、時々汽笛を鳴らし、ハンザの船を牽引しながら走っている。 ハンザの元いた世界は、航行不能になったところからそこまで遠くないらしいけど、波の影響で遠回りすることになった。 特にやることのない僕らは、戦闘指揮所で、お互いの世界について話していた。 中央の座席に僕、ハンザは左前の座席、イオは右前の座席に、それ…
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コスモス 第十一話「新しい友達」
指定された起床時間に、私はご主人様のお部屋の前に立っていました。 起こすようにご命令されていますから、コンコンと軽くノックをしてからお部屋に入ります。 お部屋の中はカーテンの隙間から漏れる細い光以外は薄暗く、ご主人様の息遣いが聞こえるほど静かです。 私は真っ先に窓の方へ行くと、カーテンを開けてお部屋の中に光を取り入れました。少し、眩しいです。 「ご主人様、七時間経ちましたよ。起きてください…
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コスモス 第十話「万能」
指揮所の中央のモニターにはコスモスの装備について、多く表示されていて、どれもどんな機能を持っているか分からない。 僕はこれから具体的にどうするか決めるため、コスモスに装備の一覧表や性能表を出してもらったのだ。 「凄い数の装備ですね…」 イオが、呆れたように言う。 僕も、この装備の多さに驚いている。 火砲だけでも百門近くあり、どの武器も威力は使ってみるまで分からない。 ただ、さっき唯一使…
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コスモス 第九話「覚悟」
目を見開いたまま、僕は動けなかった。 「こ、コスモス……。僕の、いた街……は?」 声を絞り出すように、胸の奥から押し出すようにして訊く。 「生命反応なし。熱源反応なし。その他の反応、確認できません。転移の可能性ゼロパーセント。太陽系第三惑星『地球』消失。現在、このエリアは重力が乱れているため、非常に危険です。安全確保のため、急速で離脱します」 コスモスは淡々と答え、また走り出している様だった…
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コスモス 第八話「地球が壊された日」
二学期が始まってから一週間、僕たちは体育祭に向けて、泥だらけになりながらも練習に打ち込んでいた。 夏の暑さが残る中での練習で気力は削がれ、授業中は疲労で眠く、さらには部活の練習も加わって体中が痛い。 でも、その成果があってか、最初はまとまりが無かった皆も、今ではどのクラスも団結して、どこが優勝するか分からない。 今は自由練習時間で、僕たちの学年は本番に向けて練習していて、凛音も他のクラスの…
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コスモス 第七話「夏休み明け」
夏休みが終わり、二学期の始業式の日。 僕は、少し重たい体を起こした。 カーテンから漏れる陽の光がいつもより眩しく感じる。 ベッドを降りた僕は頭を掻きながら、フラフラと階段を降りる。 パンを焼いて、母さんが作ってくれたスープをお椀によそる。 朝ごはんを食べ終わり、歯を磨いていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。 「おーい早く来いよ、先行くぞ」 里久の声が玄関の方から聞こえる。 「ち…
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コスモス 第六話「夜空に咲く花」
八月の上旬、午後五時。日はもう沈みかけていて、僕の住んでいる街は綺麗な薄いオレンジ色に染められていた。 僕とイオは今、家の前で凛音と里久が来るのを待っている。 最近はコスモスやイオと会ってばかりで、里久たちと遊んでいなかった。 さすがに里久たちとも遊びたいと思ったので今日はイオも連れて、街で行われる花火大会に行くことにした。 事前に二人には、イオは遠い親戚の子ということで説明してある。…
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コスモス 第五話「ゲーム」
チョコを食べ終った僕らは空調設備の整った車内で、フカフカな、座れば腰が沈み込むようなソファーでのんびりとくつろいでいた。 不意に「ふあぁぁ」とあくびが出てしまった。 やっぱり、このソファーは眠気を誘う気がする。 まずい……段々と瞼が重くなってきた。 このまま眠ったら…。 「ご主人様?」 その声でハッとし、横を向くと、イオが顔を覗かせていた。 「ああ、ごめんね。ちょっと眠くなっちゃってた…
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コスモス 第四話「共有する時間」
イオを着替えさせた後、僕らはコスモスの最後尾車両まで歩いてまわった。 列車は長く、設備も多かったため意外と時間がかかった。 コスモス編成は、前から機関車、戦闘指揮所、一つ目の戦闘車両、客車、二つ目の戦闘車両、機関車という順番になっていて、二つ目の戦闘車両の主砲は後ろを向いているのが確認できた。 どうやら前の主砲は前方、後ろの主砲は後方を攻撃できるようになっているらしい。 列車全体をまわっ…
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コスモス 第三話「人造少女」
田舎から帰った次の日、カーテンの隙間から差し込む光が顔に当たり、目が覚めた。 耳を澄ますと、外から小鳥のさえずりが聞こえ、心が澄んだような気分になる。 僕はあくびをしながら床に足をつき、ベッドを降りて、掛布団を整えた。 カーテンを開けると、窓の外には綺麗な青空と雲が幻想的に輝いていた。 こういう日の朝は、なんだか心地良く、今日一日が上手く行くような気がする。 さて、と僕はその景色を後に…