日本における喫茶の歴史で触れたように、メイド喫茶が誕生する素地は、かなり以前からあった。 特定の職業の制服に対して、自分が着る物として憧れたり、鑑賞する側として愉しむという文化も連綿と続いてきた。 それが何故、現代において爆発的とも呼べるブームとして現れたのか、すでに幾つか例示しているが、「道具が揃った」という点も見逃せない。それはオタク文化の発展ともリンクしている。 漫画の神様と云われた…
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【メイド喫茶論考】メイド喫茶誕生
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ 喫茶店の愛好者の間では、店員をカフェマヌカンと呼んで、店長であるマスターやマダムという用語と同じように用いられている。より一般的には、男性の店員ならウェイター、女性はウェイトレスと理解されているだろう。女性店員を、家事使用人を意味するメイドに扮装させるようになったのは、どのような経緯からなのか。 その誕生は、主に関東圏では先述したように、株式会社ブロッコリーが…
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【メイド喫茶論考】 喫茶店にスタンダードは無い
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ 多少混乱した日本における喫茶店の歴史であるが、人が集まる場というのは、「社交場」という言葉があるように、存在それ自体が役割を担う。 もとより、カフェの発祥の地であるフランスでは株取引をする人たちが集まることで発展し、イギリスではコーヒー・ハウスに集まっていた保険業者たちが「保険事業のために」人を雇ってコーヒー・ハウスを開店して、世界最大の保険組合ロイズが誕生し…
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【メイド喫茶論考】 日本の喫茶店の源流は、漫画喫茶とメイド喫茶
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ メイド喫茶が、メイドと喫茶店の融合であることを考えると、やはり喫茶店の歴史は無視できない。実像としてのメイドを離れ、喫茶店と結びついたのは何故なのか。一方の喫茶店についても、その歴史に触れてみよう。 喫茶店とは、呼んで字のごとく茶を喫する所であるが、「喫茶店とは?」と尋ねられて、とっさに形態や特徴などを述べられる人はいるだろうか。 海外では十七世紀頃にコーヒ…
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【メイド喫茶論考】 メイド喫茶のメイドとは?
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ こうしてメイドの実像をあげてみると、メイド喫茶のメイドは「真っ赤なニセモノじゃないか」と思われる読者もいるだろう。実際、「基本設定が間違っているから認めない」という人もいる。 しかし、繰り返すがメイド喫茶とは参加型のテーマパークであり、いわば「ごっこ遊び」である。 鬼ごっこを、「姿形がリアルじゃない」とか「鬼の設定が間違ってる」と批判するのは不粋というもの。…
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【メイド喫茶論考】 ご主人様とメイドの関係
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ メイド喫茶においてメイドとの談笑は、楽しいものである。 しかし、先にも少し触れたように、当時の意識として、上流階級の人間はメイドを同じ人間とは考えておらず、多くのメイドの出自であった下層の人々は上流階級の人間を畏怖していた。 そのため、メイドは家人の目から遠ざけられるように地下室や別棟で生活させられ、雇い主と廊下ですれ違うときにはメイドは目を合わせないように…
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【メイド喫茶論考】 メイドの服装
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ では、店員としてではなく、歴史上のメイドについて述べていくことにしよう。 仮想世界を愉しむための一助となることと思う。 主に黒か紺色のワンピースに、膨らんだ肩とヒラヒラのレースが付いた特徴的なエプロンと、レースの付いたヘッドドレス(頭飾り)。 そして、「お帰りなさいませ、ご主人様」と、うやうやしく出迎えてくれる女性。 メイドと聞いて、多くの人が思い描くの…
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【メイド喫茶論考】 妄想≒バーチャル≒仮想世界
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ 「オタクというのは2次元に萌えるものだと思っていたのに、どうして三次元の実在の女性に萌えるのか」という質問をされたことがある。 そもそも、「オタクは二次元にしか興味が無い」というのが誤解ではあるのだけれど、オタクのルーツに漫画やアニメという二次元媒体が大きく関係しているため、仕方の無いことなのだろう。 今でこそ小説は文学という地位を築いたが、昔は小説を読んでい…
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【メイド喫茶論考】 名前が命を宿す
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ 『言霊(ことだま)』という言葉をご存知だろうか。 『言魂』とも書き、日本では声に出した言葉に霊や魂が宿り、現実の事象に影響を与えるという考え方が古来からあり、神道における祝詞では、誤読を厳に戒められているという。 また、万葉集には柿本人麻呂が詠んだとされる、「志貴島の日本(やまと)の国は事靈の佑(さき)はふ國ぞ福(さき)くありとぞ」という歌があり、日本の国は…
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【メイド喫茶論考】 「見立て」文化
文/清水銀嶺 画/犬山しんのすけ この記号化という文化は、「見立て遊び」として日本の文化に深く根ざしていると考えられる。 記号化の例として日本画などを例に出したが、ある物を別な物を用いて表現し、対象物をより強調して受け手に感じさせるのが「見立て」である。 見立ての代表的な例としては日本庭園がある。日本庭園では、石や砂を用いて水の流れを表現したり、草木の配置によって田園や山間を模したりして、別…