装飾品を多く取り扱う店に並ばれた、鮮やかな品々を何度も何度も慎重に見比べた。棚に並べられた物の数々、どれも誰かに送るには最適そうに思えた。これなら、女性だけでなく男性もこの装飾品をつけて歩きたいと思うのではないのだろうか。 店の店主は中年ぐらいの女性で、やせ細ってはいたけれど血色はよく、ずっとニコニコして品を選ぶ僕を見守ってくれていた。 こういう飾りの良し悪しが分からない僕は悩み…
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コスモス第2章6話「街中で」
街は賑やかだった。装甲車は関所に預けることとなり、僕とイオは車から降りて、街の中心を歩いていた。フランシスさんの言っていた通り、この世界で稀に異世界人が来るということで、関所の警備兵は僕らを見ても特別表情を変えたようには見えなかった。ただ、どこの世界から来たか不明な僕たち異世界人は、本来なら入国手続きに二日ほどかかるところだったのだけど、商人を助けたという報告と、フランシスさんの紹介…
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コスモス第2章5「最強の女騎士」
イオはその細い身体で善戦した。盗賊たちは連携して2人や3人で刀を振っていたが、どれも彼女を捉えることが出来なかった。槍を振る人もいたけれど、イオはその槍を相手から奪いとると両手で槍を握り、膝で折って真っ二つにしてしまった。比較的、僕らの近くにいて、馬車を囲っていた盗賊たちも仲間を助けるため、イオの方へ向かった。 彼女は武器を持っている相手に怯むこともなく、どんどんなぎ倒してしまう。…
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コスモス第2章4話「知らない世界で」
心を明るくしてくれるような澄み渡った青空の下、雄大な山々の麓に長く深い渓谷があった。人間の文明や化学の力が及ばない、大自然の中に明らかに不自然な人工物が鎮座している。渓谷の底には川が流れており、ギリギリ着水しない高さでコスモスが停車しているのだ。 僕は発令所で各モニターをチェックしながら、コスモスに命じた。 「コスモス、損傷した箇所を確認、自己修復して。それと装甲車の準備をお願い。…
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コスモス第2章3話「亜光速」
普段のコスモスでは起こり得ない振動に立つことも出来ず、座席にしがみついていた。僕の周りに配置された座席たちがカタカタと恐怖に震えあがっていた。 異常。 それが今もっともふさわしい言葉だった。しかもGまでかかっていて、車両後方に身体が持っていかれそうになっている。こんな事があったのは過去に一回。ハンザの世界での戦闘で、今回のように前進一杯をだした時だ。でもあの時はとても短い時間だっ…
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コスモス第2章2話「見えない襲撃者」
それは突然の出来事だった。 僕もイオも、目の前で起こっていることに思考が追いつかず、ただ固まっているしかなかった。 なに!?なにが起こっているの!? まるで頭の中に分厚い凍りが張りついているように、何も考えることが出来ない。 焦り、不安、恐怖。 そんな中、コスモスから再び報告を受けた。 「三時の方向、巡行ミサイル接近中。距離3000。着弾まで20秒」 ミサイル!? 窓ガ…
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コスモス第2章1話「それは突然に」
無限に広がる、世界と世界を繋ぐ超空間。 上も下も右も左もない、ただひたすら何もない超空間。 まるで絵具のパレットに、黄緑色や水色やピンクや赤色や青色の絵具を混ぜたような模様が、四六時中うごめいている。 それはまるで夢の世界にも似ている。 そんな空間に不釣り合いな、旧式な蒸気機関車が走っている。 汽車は長く力強い汽笛を、まるで魂の歌のように響かせながら、空間をも揺るがす勢いで…
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コスモス最終回「新たなる旅立ち」
空は薄く明るくなっており、青空は見えているのに太陽はまだ昇っていない。 コスモスは少し長い汽笛を二回、長い汽笛を一回鳴らした。 これは本当なら車掌を呼び出すための汽笛合図だけど、今回は僕に準備が出来たことの合図だろう。 大人の身長よりも遥かに大きい動輪の元まで行き、その巨体を見上げてみた。 煙突からは白い煙が上がっていいき、まるで青い空に溶け込んでいくようだった。 「自己修復…
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コスモス第二十五話「また別の場所での戦い」
コスモスは敵艦の中の大きな部屋で停車した。 そこには装置やモニターが多くあり、またこの場にいる十数人の乗組員の中で他の誰とも服装が違っていて、帽子もしている男が見えた。 どうやら彼はこの艦の艦長のようで、ちょうど敵艦の艦橋で停車できたようだ。 艦長は静かにこちらを見据えている。 中央のモニターで確認する限り、他の下級の乗組員は戸惑いながらもこちらに銃を向けて、ある者は発砲して…
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コスモス二十四話「出撃」
いつも部屋の中を明るく照らしてくれる照明は消え、非常灯とモニターの明かりだけが頼りとなった。 これから、本物の戦いが始まる。 そう、本物の戦いが……。 その事実に段々と心臓の音が大きくなり、背中からは汗が滲む。 「機関出力、上昇。反転します」 「……なんとか相手を止められるかな」 「マスターが望むなら」 「心強いね」 「私はマスターの列車ですから」 「うん」と僕はうなずくと、ふ…