執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺
10:オタの源流
前回まで、長々とエヴァの系譜を大正時代にまで遡ったのには理由がある。
こうやって系譜をたどる事、言い換えれば『元ネタ探し』と言うのは、オタクの思考回路における基本だからなのである。
何か新しいモノを見たときに、「○○は××の系列」とか「○○は△△の発展系」だとか言うのは、オタクが、自分の感じるロマンを相対化して自ら理解し、他者に開陳する際の基本手法なのだ(補1)。
さて、今「ロマン」という言葉が出てきたが、昨今のオタク文化の中核をなす要素である「萌え」とは、つまりロマンのことなのだ。
大正期における『浪漫主義』と、現在のオタク文化には相似形の部分が多いことは前回までに軽く述べた。
詰まるところ、どちらも「理由を明確化しにくいがそこはかとなく好ましい何か」を示す言葉である。
そして、大正浪漫主義というのは、明治維新以来、続々と流入した海外文化と、日本伝統文化とが高度に融合したモノであった。
現代オタク文化もまた、太平洋戦争中に壊滅したそれらの文化伝統に、半世紀の間に蓄積された新たな外来文化や新技術体系が融合して生まれてきたモノである。
で、あるならば、詰まるところ、日本人の文化というモノは、ごく自然とオタク的な方面へと進んでいくモノの様である。
つまりは「日本人なら誰でもできるハズ」なのだ。
しかし、実際には、オタク的手法に長けた者と、必ずしもそうでない者とが居るのはなぜだろう?
およそ、誰であっても、幼少期にはオタク的な資質を持って生まれている(補2)。
しかし、成長期の段階を経るに従って、個人差はあるが誰も皆「昨日までの自分を恥じる」様な言動を取る様になっていく。
オタクとそうでない者との差は、その際の、些細な視点の違いから発生するのだ。
次回からは、その点について考察しよう。
★補1
この際に注意したいのは「○○は××のパクリ」という思考は極力避けるべきだ、という事である。
もちろん著作権は非常に大事で重要であるが、そもそも、面白いモノとは系譜を引き継いだモノなのだから、似たところがあるのは当然であり、その源流を探る行為は研究としては有意義であるが、それは決して「犯人探し」になってはいけない。
★補2
幼少期における急成長の原動力は、好奇心と探求心であるが、これを長じても幼児レベルの高度で敏感な状態に維持し続けているのがオタクである、とも言える。
オタクとして成功するための要点は「子供の感性」と「大人の理解」を併せ持つことにあるのだ。
……ただし、大人の部分をおろそかにすると、ただのキモオタやイタイだけのオタになるので、ソコん所が重々要注意のなのではあるが。
◆次回は「11:全肯定のススメ」
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◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
『ためログ』にて記事を執筆。