執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺
11:全肯定のススメ
さて、前回までは「源流」、すなわち「元ネタ探し」という、オタク的資質の基本中の基本について考察してきた。今回からは、これを持っているとだいぶ違う、という「ある視点」の持ち方についてお勧めしていきたい。
それは「全肯定」である。
人が何かを評価する際、多くは「ああ、○○は××だからダメだ」というように、否定のスタンスから入るのが常である(補1) 。
だが、これは実は非常に簡単で便利、それをしているだけでなんだか偉そうに見えるというある種の万能ツールではあるが、本質的な意味合いを逃しがちで、全ての物事を簡単に考えて済ましてしまうと言う危険な癖が身につきかねない諸刃の剣でもある。
そこで、ここでお勧めしたいのが「全肯定思考法」なのだ。
その方法はきわめて簡単。
とにかく、なんでもまずは肯定してみるのである。
例えば……。
巨大ロボットに人間が乗り込む理由。
巨悪に立ち向かう組織の先鋒が少数の少年少女であるワケ。
翼もないのに空を飛ぶ人間型の巨大宇宙人。
空中で軌道を自在に変更できる必殺キック。
……等々(補2)。
アニメや特撮番組を見ていると数多く見られるこれら「どう考えても変!」な事柄を、「逆にこう考えたらどうだろう?」と言うスタンスで、独自に説明して、その矛盾を解決してしまうのである。
これには、数多くの予備知識が必要となるだろう。
そして、その習得にある種の楽しみ、モチベーションを持つことが、優秀なオタクへの近道なのである(補3)。
現に、この手法のおかげで、超長寿の大人気作品となったアニメが日本にも存在する。
今年で放映30周年を迎える、『機動戦士ガンダム』……この国民的アニメこそ、まさに「肯定」の賜なのである。(以下次号)
★補1
実は、この考え方が「成長してきて大人ぶりたい年頃になった子供」が子供番組から卒業するきっかけになる、という側面もあり、その意味では発想法の基礎でもあるのだが、基礎であるが故に、応用力に乏しいという面がある。
オタクとそうでない者との差は、その頃に肯定的発想に転換が出来たか否かにあると言ってもよい。
★補2
もちろん、制作者もその辺はぬかりなく、劇中でおおよその説明はされているケースがほとんどである。
よく聞く「○○のココが変!」的なネタ話の多くは、作中における最低限の説明すら理解していない事から派生するケースが多い。
なので、肯定にせよ否定にせよ、まずはその作品をよく見てしっかり理解する事が大前提である。
★補3
世界的に有名なのは、コナン・ドイルの『シャーロックホームズ』シリーズのコアなファン層である「シャーロキアン」達であろう。
実は、著者のドイルはホームズシリーズの継続に熱心でなかったために、同シリーズにはシリーズ物として通してみると数々の矛盾が存在するのだが、シャーロキアン達はその矛盾を見事な解釈で次々と説明してしまう。
むしろ、矛盾の解消を語り合うことそのものが彼らの活動の中心にある、という印象さえ受ける程。
作品矛盾の解決策としては賛否共にあると思われるが、ある種の知的ゲームとして非常に楽しげであることは間違いがない。
◆次回は「12:飛べ、ホワイトベース!」
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◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
『ためログ』にて記事を執筆。