<<通巻18号>> トキワ荘のオタク始祖

記事提供元:北園茶房
執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

18:トキワ荘のオタク始祖

 「トラワレ」は排他的、「ナハタレ」は友好的……という観点に、オタクが人生において成功するか否かの鍵がある……という考察を進める際にも、やはり先達の例を引き合いにだして行くのが分かりやすいと思われる。
 そこで、今回は特に、この二者が混在し、それぞれがどのように人生をたどっていったかが比較的明らかな「トキワ荘」の例を用いてみたい。
 トキワ荘とは、これはもう言わずと知れた、昭和期における漫画家の登竜門となったあのトキワ荘である。
 トキワ荘は、出身大家の先生方それぞれが各自の視点で当時の回想録を事実・虚構交えて執筆しているため、当時のメンタリティを、大変に考察しやすい。そして、そして、後に成功した先生方は皆、「トラワレ」から始まり、やがては「ハナタレ」へと昇華していった痕跡があるのだ。ソレはすなわち、「トラワレ」てこだわっていた自分の根源の根っこを自覚し、その上で発想の自由さを獲得して解き「ハナタレ」て行った軌跡なのである。
 彼らの共通言語、こだわりの根源は『手塚マンガ』、そして『漫画少年』誌である。
 そもそも、大人が漫画を読むこと自体が異常とされていた時代、ましてやその担い手になろうなどと言うのは周囲に理解されようがない。周囲の無理解が「トラワレ」を生む。しかし、一度「トラワレ」無いことには「ハナタレ」ないのもまた事実なのだ。
 例えば、藤子A氏の『まんが道』等を読むと(補1)、今日ではその活躍を見ることの出来ない人たちもまた多く名を連ねているのに気がつく。
 「トラワレ」から、自らの作風の有り様を理解して、その上で「ハナタレ」た結果、筆を折る決意をしてしまった寺田ヒロオ氏は例外としても、その多くは、終始何かに「トラワレ」たままだった様なのだ。(以下次回)


★補1
 概ねにおいて、実在登場人物に対して好意的に書かれている『まんが道』であるが、その描写には、よく読むと人物事にかなりの温度差があり、非常に友好的で交友範囲が広い印象がある藤子A氏にしても、当時的にはかなり「トラワレ」からくる得意・不得意があったのだな、ということが垣間見えてきて興味深い。

次回は「19:すなわち『これでいいのだ』」
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
 『ためログ』にて記事を執筆。

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