<<通巻36号>>『ガンダム』を見よう その3 ~なまじ勝利してしまったために連邦政府は何も学ばず、地球圏には戦争の傷跡だけが長く残る事になった

執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

36:『ガンダム』を見よう その3

「U.C.編・2」
 地球連邦政府の構造腐敗から起こった、宇宙移民者冷遇の帰結として起こった「一年戦争」であったが、なまじ勝利してしまったために連邦政府は何も学ばず、地球圏には戦争の傷跡だけが長く残る事になった……という前提から始まる「戦後」の物語群がこちら。
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』
 アナログ時代ロボットアニメの最高峰とも評される緻密な作画と、理想に殉じるジオン残党軍と、上層部の腐敗体質に翻弄される若き連邦兵の、悲しくも熱い物語で人気が高い。
 話数も手頃、総集編もある。
『機動戦士Ζガンダム』
 先の「0083」を見ておかないと、世界感の前提条件が分かりにくいのが難ではあるが、初代の正統な続編としての第一作目がコレである。
 テレビ版と劇場版三部作があるが、今なら断然、見やすい劇場版をお勧めする。
『機動戦士ガンダムΖΖ』
 話が暗くなりがちだったTV版『Z』に対して「明るいガンダム」を目指してしまった異色作。
 他のU.C.モノと比べてあまりにも異色なノリと、話数が多いTV版のみで再視聴しやすい総集編がないためにファンの間でも未だに評価が定まっていない……のだが、最新作『UC』にゲスト出演しているメカニックが多く、近年再評価の動きがちらほら出始めた。
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
 初代の主役、アムロとシャアの決着が描かれる劇場版新作……と言う事で、公開当時、「完結編」的な注目を集めた……のだが、もはやこの時点でガンダムの主役は「人物」と言うよりも「その世界感」となっていた感があり、以降も続編が作られていくのはご存じの通り。
 内容的には「劇場映画として正攻法で素直に楽しめる前半と、抽象的で理解するのにある程度頭を使う必要があるラストシーン」と言う怪作である事が物議を醸した。
『機動戦士ガンダムUC』
 福井晴敏の小説が原作となる、今のところアニメの最新作。
 ラストが難解だった『逆シャア』直後の時代設定なため、視聴者世代からすれば『逆シャア』の答え合わせ的な意味の期待感も含むが、単にロボットアニメとして「とにかくオモシロイから見てみろ」と胸を張って言える傑作である。
 と、ここまでが一年戦争戦後編。
 次の『機動戦士ガンダムF91』からは新時代編となり、ジオンはすでに過去のモノ、メカニックもキャラクターも一新された新ステージとなる(★補1)。
 そして『機動戦士Vガンダム』が、今のところ「U.C.」モノの最も未来を描いた話、となっている。(★補2)
 さて、ここまでを踏まえて、「U.C.」をどう切り取っていくか?
 次回はその辺を色々と考えてみよう。


補1
 元々はテレビシリーズ用の企画であり、その前半部分を元にした劇場版だったのだが、諸処の事情から後半部分はアニメ化されず、後日談的続編が『機動戦士クロスボーン・ガンダム』 として漫画化されたという、アル意味で不遇なタイトルである。
 もっとも、事情は不遇でも物語はなかなかオモシロイので、機会があれば『クロスボーン』共々、是非とも手にとって欲しい次第。
補2
 最も未来の話ではあるが、別段世界の最後を語っている訳ではないので、設定上はまだまだ「宇宙世紀」は続き、やがて富野由悠季氏の小説『ガイア・ギア』に連なる事になるのだが……この小説、「シャア」の名前こそ出てくるモノの、世界感の根底が微妙に『ガンダム』とは異なる感覚で描かれており、登場するメカもモビルスーツではなく、更に次世代の別物(「マン・マシーン」と呼称している)なので、続編でありながら別作品という、実に奇妙なポジションにある。
 モノが小説のみの作品なため、現在では「公式」とは考えられていない様子である。

次回は「37:『『ガンダム』を見よう その4」
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)

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