38:『ガンダム』を見よう その5
「∀への道」
『Gガンダム』『ガンダムW』『ガンダムX』の三作品は、放送枠的には富野監督の宇宙世紀もの(今のところ)最終作になっている『Vガンダム』を引き継ぐ形で製作された、それぞれ別々の監督達による作品群である。
対して『∀ガンダム』は、やや間をおいて、別放送局の別枠で製作されたモノだ(★補1)。
『ガンダム』と言う作品が今日もまだ続行中で恐ろしく裾野が広い事と、そのシリーズを網羅して語るのが困難である理由とが、主にこの「G〜∀」の4本に集約されている。
この4本には、作品世界内での暦=歴史上、何の繋がりもないのだが、「∀」のクライマックスまで行くと「過去様々な戦乱の歴史」=「黒歴史」の映像として、宇宙世紀を含めたこれらのガンダム作品の映像が流用されているのである(★補2)。
それ自体は、いわゆるファンサービスの一環なのであるが、ガンダムファンはタダでは応じない。
ここでの解釈は、『∀』が「数万年も未来の出来事らしい」事と合わせられて、全てのガンダム世界は、文明が発展しては崩壊して再び復興することを繰り返してきた一繋がりの歴史であり、その最終章が『∀』である、となってしまうのだ。
この辺になると、作品内容のみではなく、「長期シリーズ化の閉塞感を打破したい」制作当時の送り手側の思惑と都合、そして受け手側の賛否両論な反応と実作品へのフィードバックという、現実の出来事をも合わせてかみ砕かねばならない側面もあり、「オタク」としても「より高等な視聴テクニック」が要求されるとも言える(★補3)。
こうして高度広域化した『ガンダム』だが、「マニアック化」と言う、本末転倒な側面も生み出されてしまった。
そこで、次にはソレ単体で成立する新たな「スタンダード」が模索されるのである。
★補1
『Gガンダム』が15周年、『∀ガンダム』が20周年の記念作であり、それぞれ「従来の枠組みを破壊する」、「すべて認めて包括した上でやり直す」という、初心に返るための試みが成されているのだが、その手法がまるで正反対な点が興味深い。
特に「G」は、主人公を今川監督、その師匠を富野監督に置き換えて穿ってみると「久々に再会したら、今まで習ってた事を全部忘れてぶっ壊せ」と言われたところが共通していたりと、裏読みをしてみてもオモシロイ部分がある。
★補2
ガンダムを仇敵とするトラウマを持つコレン軍曹(冷凍睡眠で歴史の狭間から復活した人)の脳裏によぎるのが、初代のガンダムではなくてどー見てもウィングガンダムゼロカスタムだったりと、これら三作品をどういう順番で並べるか、という考察のヒントになる部分もチラホラある……なお、この順番については現在のところ正解はなく、それぞれが勝手気ままに想像して楽しめる。
★補3
宇宙世紀モノを続ける中で、「ガンダムは新しい意欲作である」部分と、「リアルにこだわった戦記物である伝統」とが乖離して、新企画がどんどん萎縮化の傾向を見せ始めた、というのが作り手側の都合であり、歴史の隙間埋め作業の弊害で「今度のガンダムは前のガンダムより古い時代のだから前のより弱いんじゃあ?」という感想がファン層の失望を招いてもいた。一方、代理店側から見ればすでに過去のモノと見られる風潮もあったため、満を持して企画された宇宙世紀最新作「F91」が興行的に不振に終わってしまい、当初予定されていた展開に支障が出ていたという事情もある。こうして企画された『G』『W』『X』は、それぞれ「格闘ガンダム」「群像ガンダム」「放浪ガンダム」と言う、従来の枠組みを超えつつも要は引き継ぐというバリエーション豊かなシリーズとなったのである。
◆次回から『オタクサバイバルNEXT』となり、第1回は「オリジンの完結とAGEの開始」を取り上げます。
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)