《オタクサバイバルNEXT》 第2回『物語』に必要な『葛藤』と『断絶』~『AGE』ですが、低評価に対してちょっと弁護しにくい理由があります。その理由とは……。

執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺

N02:『物語』に必要な『葛藤』と『断絶』

 ガンダム久々のテレビシリーズ新作である『AGE』ですが、周辺であまりよい評価を聞きません。
 まあ、ガンダムの新作はいつもこうと言えばそうなんですが(★補1)、今回ばかりは、1クール目前まで視聴した現在、低評価に対してちょっと弁護しにくい理由があります。その理由とは……。
と言ったところで前回の続き。キャラデザインや作画などの『演出を除いた』『物語』部分に必須の要素の話です。
およそ、どんなジャンルの作品であれ、人間を描いている以上、そこで展開されているドラマに感情移入して面白がるには、展開上必須のノルマがあります。
 端的に言えば、登場人物に『葛藤』と『断絶』が存在し、それが解消されていく変化に、見る側は面白さや感動を覚える訳です。
 『葛藤』と『断絶』を抱えて、紆余曲折の末変化するのが物語の主人公であるので、時に主人公は劇中でヒーローとされる存在ではない場合があります(★補2)。
この点に注目して、初代ガンダムとAGEを比較していきたいと思うんですが……この際に注意する点がもうひとつ。
 要素を、好き嫌い依存度が高い『演出』と、比較的幅広い層にアピールできる『物語』要素に分けて分析した後、各要素の比較法にも留意しなくてはいけない点があります。
それは『良いところと悪いところを比較しない事』です。
 これは日常生活でもついついやりがちなのですが、正確な判断を下すには、『良いところ同士、悪いところ同士をそれぞれ比較』する必要があるのです。
良いところと悪いところを比較してしまうと、いわゆる「箇条書きトリック(★補3)」に陥ってしまいがちで、好き嫌い以前に下すべき正しい講評になりません。
 スキかキライかの判断は、正しい講評を下した後でじっくり考えても遅くはないのです(以下次回)


補1
 「メカの線増やせば良いってもんじゃない」と言われたZガンダム、「設定も展開もスーパー過ぎでこれってガンダムじゃなくてもいいんじゃね?」と言われたGガンダム、
 「ひげって何(w)」と言われたターンエー、「ガンダムに萌はねぇ」といわれたSEED、などなど枚挙にいとまはないが、どれも完結する頃には評価が上がっている。
 これは、新しい事への挑戦に意欲的なガンダムというタイトルの宿命とも。
★補2
 端的な例が『ゴルゴ13』である。
 劇中最強には間違いないゴルゴは、葛藤や断絶を超越しており、ほぼ変化する事が無いが、ゴルゴと関わり合った各話の主役達は劇的に変化している。
 ゴルゴは、劇中において裁定を下す神の立場であって主役ではないのだ。
★補3
 語り手にとって有利な条件だけを箇条書きして読み手の思考を誘導する手法。
 例として、
*主人公を助けに未来からロボットが来る
*ロボットは主人公の運命を変えようとする。
*主人公とロボットの間に友情が芽生える。
*……以上の点が共通なので、『ターミネーター2』は『ドラえもん』の盗作である。
 ---という論法や、「パンは危険な食べ物」などが有名な事例。

◆次回は、N03:十話までを比べてみよう
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
 80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
 ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
 独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
 唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
 既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)

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