N08:奥義『13フェイズ構造』
さて、物語を理解する上で必須の法則、とは……と、当初はここで語っていく予定だったのだが、非常に有意義な本があったので、ここで必読書に推させていただきます。
沼田やすひろ・著 金子満・監修
キネ旬総研エンタメ叢書
『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方』
『同「おもしろい」アニメと「つまらない」アニメの見分け方』
この二冊。
視聴者が、物語の変化に納得するために必要な段階を13の「フェイズ」に分けて分析する方法のマニュアル本で、以前本稿で「物語」と「演出」などで軽く触れた部分が詳細かつ完成度の高い形で解説されています(★補1)。
で、話は前回に戻ります。
前回を読んでいる前提で話を進めますと、フリット単体で見た場合、彼のフェイズは、一度「第10フェイズ・契機」で終わってしまい、第二部へと飛んでしまうのですな(★補2)。
しかし、第二部、第三部と、フリットは見かけの主役からは遠ざかりますが、ずっと出番自体は続いています。
実は、ここがAGEの肝の部分で、三世代にわたる主役交代劇ではなく、三世代にわたる歴史群像なのではないか、と言う事でなんですね。
かつてのガンダムシリーズでは、「歴史のうねり」が陰の主役と以前書いた覚えがあるんですが、このAGEはこれが「少年期から老境まで描ききられていく人物」によって、表の主役になっているわけです。
さて、そうなると……フリットの契機と決意は「これ以上の犠牲を出さないために敵を殲滅する」ところにあり、敵対組織の完全殲滅は、事実上不可能で、彼の「満足」はこのままではあり得ない事になります。
そこで、三代目のキヨが、果たしてどんな役目を担っていくのか注目、となります。
★補1
監修の金子満氏は、個人的に尊敬している方なもんで、今回原稿の口調がいつもと違い事をご了承くださいませ(苦笑)
★補2
AGEの13フェイズ構造は非常に特殊で、キャラごとにわずかずつずらした重ね掛けがなされている模様。例えば初代艦長はすでに契機までを済ませて、対決から排除、満足までのラストフェイズを復讐という形で結実させますし、それを見たフリットが、彼の決意を復讐ではなく防衛と救済のための戦いにする、という影響になっていく構造となっています。
また、第二部アセムの13フェイズは、親友であり敵であった「仮面のあいつ」との衝突と共闘を経て「互いの立場を理解する」と言う形で一端の満足を得て引き継がれており、なるほどだから第三部冒頭で彼は出てこないわけですな、と読めるのです。
第三部主人公のキヨは、その半生を掛けてこれらすべてを引き受けねばならんわけで、彼の動向次第でAGEが名作になるか否かが決まる、という次第。刮目してみよう(笑)
◆次回は、N09:奥義『13フェイズ構造』
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&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&& 執筆者紹介 &&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)