千葉県船橋市で、小学六年生の男の子が、給食に出てきたパンを咽喉に詰まらせて死亡するという事件がありました。(※1)
校長は、「よくやっていたと救急隊員の方にも言ってもらった」といった趣旨のことをテレビの取材に答えていましたが、報道の内容を信じるとすれば、担任の教師が本気で助ける気があったのか、はなはだ疑問です。
というのも、三つも致命的なミスを重ねているからです。
一つ目は、最初期の段階で救急車を呼ばなかったこと。
二つ目は、水などを飲ませたこと。(報道によるとクラスメイトがスープを飲ませたとのこと)
トドメは、仰向けに寝かせて救急車の到着を待ったことです。
救急車を呼ぶことについては、軽症なのにタクシー代わりに呼ぶことが問題となっていたりしますが、咽喉に異物が詰まるというのは、かすり傷や微熱とは訳が違います。
死ぬか助かるかの、二つに一つという危機的状況です。
呼んだ直後に異物が取れて恥をかいたとしても、それは「良かったこと」と思うべきでしょう。
また、電話をすれば的確なアドバイスを受けられる可能性があります。
救命措置において、まず専門家のアドバイスを受けるというのは、重要なことです。
次に、咽喉は一つですが、咽喉には飲食物を胃に送る食道と、呼吸をするために肺と繋がっている気道という二つの通り道があり、気道の入口には飲食物の侵入を防ぐために、意識すること無く開閉する弁があります。
そして咽喉が詰まったとき、異物が食道側で詰まっているのか気道側で詰まっているのか、あるいはその手前でなのかというのは、素人には判断できません。
もし気道側であるときに水などを飲ませて、そのまま異物ごと肺に送り込んでしまえば、事態をさらに悪化させてしまいます。
たとえ吐かせるために飲ませたとしても、確実に吐くとは限らず、指などを入れて取り除こうとするのと同様、異物を奥へと押し込んでしまう危険が高いため、絶対に避けなければならない行為です。
ですから本人に吐き出させるのが大事で、まずはその手助けを試しましょう。
背中に回り、左右の肩甲骨の間を、肩叩きの要領で叩くというのは、その基本中の基本です。
それで効果が認められない場合には、今度は背後から相手の両脇下に腕を通して、片手を握って拳を作り、その拳をもう片方の掌で包むようにします。
そして拳を相手の肋骨の分かれ目の下に当てて、気合とともに一気に押し込みます。
相手は痛がるかもしれませんが、力を加減してはいけません。
それでもなお取れないようでしたら、最後の手段として掃除機を使って異物を吸いだすことを試みます。
最初に掃除機を使わないのは、被害者は苦しさゆえに暴れがちであるため、狭い口の中に掃除機の先端を入れることもまた危険だからです。
他に、幼児の場合には、逆さに抱えて背中を叩くという方法もあります。
そのさいには、落下の危険を軽減するために布団などの柔らかい物を下に置いたり、できるだけ床から低い位置で抱えるようにしましょう。
過疎地や交通状態の酷い地域でなければ、これらをしている間に救急車が到着すると思われますが、手を尽くして待つしか無くなったとしても、決して横に寝かせてはいけません。
特に、頭を打ったのとは話が違うのですから、何もしないで仰向けに寝かせておくというのは最悪です。
というのは、肺は全方位に膨らむのに、仰向けに寝かせてしまっては背中の側に膨らまなくなってしまうからです。
ただでさえ呼吸が阻害されている可能性があるのですから、少しでも呼吸しやすい姿勢、すなわち壁にもたれかけさせるなどして上半身を起こしておき、かつ顔が下を向いて気道が狭くなることを防ぐために顎を手で支えて、やや上を向くように気道が直線になるようにしてやります。
本人の体力の問題などで寝かせる場合には、体を横に向かせて、やはり気道が塞がらないように、首の位置に注意をしましょう。
件の校長には、ここまでやって「最善を尽くした」と言ってもらいたいものです。
とかく忙しいと云われる、クラス担任を持つ教師には酷な話かもしれませんが、多くの学校の教室には外部との直通電話が無く、授業中に携帯電話を持っていないとすれば、校舎の構造上からも助けを呼ぶのに相当のタイムラグが生じる以上、基本的な救命措置や応急措置を心得ていてもらいたいですし、保護者の側で講習会を企画するくらいは必要かもしれません。
何よりも今回、亡くなった男の子を助けようと、クラスメイトの子供たちが間違った対応をしてしまったことは、非常に残念でなりません。
私が子供の頃に行なわれていた学校の朝礼などは、それこそ校長による役にも立たない道徳話を聞かされてうんざりしたものですが、現在も同様であるならば、もっと子供たち自身に危機に直面した際の対応方法を教えることが望ましいと思います。
野田聖子消費者行政担当相などは、製品の規制を強めて(※2)消費者を過剰に保護にする方針のようですが、他人に任せていては子供は護れません。
(※1)
千葉県船橋市立峰台小学校(末永啓二校長)で、6年生の男児が給食のパンをのどに詰まらせ死亡していたことが21日わかった。窒息死とみられる。
同校によると、男児は17日午後0時45分ごろ、給食に出た直径10センチ余りの丸いパンを一口ちぎって食べ、残りを二つに割ってほおばり、のどに詰まらせた。気づいた担任が注意し、男児は友だちに促されてスープを飲み、廊下の手洗い場ではいた。いったん教室に戻り担任らが背中をさすったり、たたいたりしたが苦しいと訴え、再び廊下に出て横になった。男児の意識が薄らぎ、救急車で病院に運ばれたが同日夕に亡くなった。
末永校長は「軟らかいパンでこんな結果になるとは予想できず、驚いている。友だちとも仲良くする優しい子で残念だ」と話している。
同校は20日朝臨時の全校集会を開き、児童に事故を伝えたが、泣いている児童もいたという。「児童のショックが大きい」として校内にスクールカウンセラーを待機させている。
(2008年10月21日 朝日新聞より引用)
(※2)
こんにゃく入りゼリーを食べた子供が窒息死した事件を受けて、自民党内で10日、ゼリーの形状などを規制する新法制定を検討する動きが出てきた。消費者庁設立のきっかけともなったゼリー被害の防止に焦点を絞った新法だが、窒息による死亡事故が多いモチの規制との兼ね合いなど課題は山積する。新法制定の背景には、政府が消費者の安全をはかるため国会に提出した「消費者安全法案」でも根本的解決にはならないとされる事情があり、ゼリー規制の議論は政府・与党肝いりの消費者庁構想にも影を落としそうだ。(酒井充)
「子供が見て、食べたら死ぬと分かるようにしないと。それぐらいはできるでしょ!」
こんにゃく入りゼリーの規制を議論した10日の自民党消費者問題調査会(会長・岸田文雄前消費者行政担当相)は、河野太郎氏ら出席議員らが怒声を発するなど、さながらゼリー糾弾の場となった。ほかにも「外国並みに規制する法律をつくるべきだ」といった意見が続出し、議員立法による新法の国会提出を目指す方針が確認された。
政権与党の議員がゼリー規制に熱くなるのには事情があった。9月に兵庫県の1歳の男児がこんにゃく入りゼリーを食べ、のどに詰まらせて死亡する事件があり、平成7年以降で17人目の犠牲者となったためだ。
国外では、EU(欧州連合)が独特の硬度を生み出すこんにゃく成分を添加物とし、ゼリーへの使用を禁止しているのに対し、日本国内では食品衛生法の対象は食中毒などに限られる。
このため、今回のような死亡事故を防止する取り組みが「生産者重視から消費者の安全を重視する行政への転換の象徴」(中堅)と位置づけられている。
そのためか、この日の会合では厚生労働省側が「製造中止や回収させる法制度はなく、強制力のない指導が限界」と説明しても、議員の怒号は消えなかった。
だが、新法でゼリーの形状などを規制するには「法の下の平等」という点で大きな壁が立ちはだかる。こんにゃく入りゼリーはだめで、モチは規制しなくてもいいのか-という問題だ。
実際、10日の調査会でも谷公一衆院議員が「モチは昔から死亡事故が多い」と指摘した。一方、野田聖子消費者行政担当相は10日の会見で「モチはのどに詰まるものだという常識を多くの人が共有している」と強調したが、「ゼリーだけを規制し、モチやアメを規制しない合理的な根拠は見つかりにくい」(厚労省)というのが実態だ。
厚労省の調査では、平成18年中に食品を原因とする窒息で救命救急センターなどに搬送された事例は、把握できた計803例のうち、モチの168例が最多で、「カップ入りゼリー」は11例だった。
政府が今国会に提出した消費者安全法案には首相の権限で商品販売などを最大6カ月禁止できる項目が盛り込まれた。だが、法案審議は民主党の難色でめどは立っていない。どの商品がどれだけ危険かという判断も容易でなく、ゼリー規制新法も、「なぜゼリーだけかと野党に突っ込まれても答えようがない」(政府関係者)のが現状だ。
(2008年10月11日 朝日新聞より引用)
※野田聖子オフィシャルサイト
http://www.noda-seiko.gr.jp/contact/
配信 サークル見習い魔術師
編集 泉 都市
著者 清水銀嶺
E-mail:info(アットマーク)magical-shop.net
http://www.magical-shop.net/
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