1日に約15万~20万人が訪れる、日本最大規模の同人誌即売会。日本最大ということは、同時に世界最大でもある。
これほどまでの規模になったのは、「来る者は拒まない」という、二代目代表であった米澤嘉博氏(2006年10月1日に癌のため死去)の考え方によるところが大きい。
マスコミでは既存作品のパロディ(二次創作)やアダルト作品が大きく取り上げられることが多いが、全体から見れば一部に過ぎず、オリジナルの漫画作品を始めとして、医療関係者や鉄道関係者といった特殊な職業従事者による裏話的な作品、手作りアクセサリーや作り方の指南書、紅茶やコーヒーの淹れ方、ペットの飼い方など、ジャンルとして一括りにできない雑多な作品が多くを占めており、「自由な表現活動の場」となっている。
また、コミケ自体や運営、準備会などに対して異論や批判を表明しているサークル(個人や団体)の参加も、実力行使による妨害や法令違反で無い限りは認めており、元スタッフによる内部告発といった内容の同人誌も頒布されている。
他にも、既存キャラクターの格好をするコスプレは、「同人誌即売会」という本来の趣旨にそぐわないため禁止してはどうかと準備会内部や参加者からの声が出ているが、「自由な表現の場」を堅持するという理念に基づいて認められているなど、その姿勢は一貫している。
なによりもコミケにおいては、主催者側であるスタッフも、作品を頒布するサークルも、一般参加者も含めて、「等しく参加者」であるという理念の共有もまた、ここまでの成長を支えてきたと云えるだろう。
しかし近年では、その理念を理解しないまま、マスコミやネットで情報を得て「興味を持った人」が、お客様気分で参加して問題を起こしているため、米澤氏亡き今、その姿勢を貫き通せるか懸念される。米澤氏が存命の頃に、批判者が「米澤はコミケを私物化している!」と論じた時、擁護者は「コミケは米澤氏の私物だ!」と反論したほど、米澤氏の影響力は大きく、また、それほどの責任を負っていたからである。