オタク文化として語られることが多いメイド喫茶。そのオタク文化なるものが世間では、男の文化として捉えられている。これは多分に、オタクという言葉が世間に広まったキッカケが、宮崎勤による連続幼女殺人事件だからだろう。
実のところ、当時すでにオタクという呼び方は、アニメファンなどの間では死語になりつつあった。
一方、殺人事件によってオタクのイメージが一般世間に最悪の形で広まる前、雑誌において初めて取り上げられる以前から、その起源には負の側面があったと云われている。
これは諸説あるうちの一つな訳だが、現在のオタクという言葉の位置にはかつて、『マニア』と言う呼び方があった。
対象物が好きであるがゆえに関連する書籍や物品を入手しようと、いささか常軌を逸した金額を投資したり行動する人たちに対して、『ファン』を自認する人たちは「マニアにはなりたくない」とネガティブな意識を持ち、マニアはマニアで「ファンと一緒にするな」と自ら差別化する中で、双方どちらによるものか分からないものの、マニアという言葉に熱狂的という連想からか、「狂」という字を当てたりしていた。
ところが、さらに常軌を逸した、非合法スレスレ、それどころかアニメの制作スタジオからセル画や原画、あるいは特撮作品では撮影現場からミニチュアや機材を持ち出すという完全に犯罪行為と云えることをする者が現れた。
その非合法性ゆえに、互いに名前を名乗らず「お宅」と相手を呼び、そういう輩が「好きだから」という動機でコレクションの自慢をしたりするのに対して、マニアが一緒に扱われるのを拒み、オタクという言葉が発生したというのが、負の側面を持った説である。
その発生から負のイメージを持つオタクという言葉が、コラムニストの中森明夫によって雑誌に、そのスタイルや喋り方、性格などについて「男性的能力が欠如している」というようなネガティブなイメージで初めて取り上げられ、それから六年後に起きたのが、宮崎事件である。
掲載された雑誌自体がメジャーではなかったし、会話の中で使用してもさほど奇異ではない「お宅」という呼び方が、むしろ固有名詞のように単独で定着するというのは、本来なら起こりにくい訳で、忘れられていこうとしている時期に、突如としてマスコミによって使われて広まった訳だ。
ファンやマニアといった、日常語とは違う語句を、センセーショナルな事件で使いたいという意識が、報道する側に働いたのかもしれない。
ともかく、世に出た最初のコラムにおいても、世間に広まったマスコミの報道においても、「オタク=男」という図式が作り上げられた。
しかし近年、女性のオタクが自称する「腐女子」や「貴腐人」という言葉がマスコミに取り上げられ、ブームになったメイド喫茶の店員が女性のオタクと紹介されるようになったことから、「女性のオタクが増えた」と捉えられるようになってきた。
だがこれは、事実と相当の齟齬がある。
例えば、別項にも書いてあるように、自分の想いを具現化する行動力を発揮し、好きなキャラクターに扮するコスプレを始めたのは女性である。そのコスプレを行なったコミックマーケットは、今でこそ男性向けのアダルトな同人誌作品があるという部分がマスコミに面白おかしく取り上げられているが、一九七五年に初めて開催された時には、約七○○人の参加者の実に九十%が中高生の女子だった。男性参加者が過半数を占めるようになるのは、それから六年後の一九八一年のことである。
また、日本のテレビアニメのエポックメイキングとなった作品、一九七四年に放送された『宇宙戦艦ヤマト』は視聴率の低迷から、一九七九年に放送された『機動戦士ガンダム』は視聴率は悪くなかったものの、スポンサーの玩具の販売不振によりテレビ放送が打ち切られたにも関わらず、それぞれ劇場作品として公開されて、現在に至るも人気を保っているが、その劇場化を後押ししたのは女性ファンだった。どちらの作品も当時、男性ファン、特にSF作品としての視点から「SF作品ではない」と否定する人たちと、「新たなSF作品だ」というような肯定する人たちの間で、険悪な雰囲気が漂っていた。そんな中、作品の世界観や物語などよりも、登場人物を好きになり、その想いを原動力にテレビ局や制作会社に再放送、再作品化を働きかけたのが女性ファンだったのだ。
オタクの負のイメージの一つである、「二次元のキャラクターに恋をする」というのは、むしろ女性的なものなのかもしれない。そして、そのための行動力は男性よりも有るようである。
女の子向けの玩具が、本物の料理ができる玩具や、本当にメイクできる化粧品という方向に展開していることを考えると、興味深いことだ。
「女性は本質的には、ロマンチストではなくリアリスト」と云われることもあるが、むしろ現実と地続きでファンタジーな世界と「行き来できる」特性を兼ね備えているのかもしれない。「想像力が創造力」とでもいうように、女性は夢見たものを具現化するのである。
そしてメイド喫茶も、メイド服を着た女性にかしずかれたい、癒されたいという男性の側の要望があったにせよ、それが実現したのは、商品化された女性ではなく、変身願望を持ち、かつそれを実現しようという行動力を兼ね備えた女性がいたからであろう。このムーブメントは、女性によってもたらされた側面があるのだ。
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今回のイラスト、本にまとめる時は訂正させてね(・∀・;
「いらしゃいマセ」じゃねぇよ、「お帰りなさいマセ」だろうが、小生のバカ・・・orz