こうしてメイドの実像をあげてみると、メイド喫茶のメイドは「真っ赤なニセモノじゃないか」と思われる読者もいるだろう。実際、「基本設定が間違っているから認めない」という人もいる。
しかし、繰り返すがメイド喫茶とは参加型のテーマパークであり、いわば「ごっこ遊び」である。
鬼ごっこを、「姿形がリアルじゃない」とか「鬼の設定が間違ってる」と批判するのは不粋というもの。
「ごっこ遊び」というものは本気で臨むのが愉しむ秘訣である。
鬼が、やる気なさそうにダラダラと追いかけたり、どうせ捕まっても殺されるわけじゃないしと冷めて逃げ回る鬼ごっこが楽しいはずも無い。
ただし、店員にメイドの服装をさせただけというメイド喫茶も在る。
行く喫茶店は目的によって選べば良いので、当然のことながら「眺めるだけ」というのもメイド喫茶の愉しみ方の一つである。
現代のメイド喫茶においては、伝統的なデザインだけではなく、アニメやゲームを意識したデザインのものも多く見受けられ、時代もジャンルも越えた服装の違いを堪能できる。
それと、十九世紀のイギリスでは、ちょっとした日本ブームが起きていた。日本から輸出した食器が、上流階級の間で好まれたのである。
もちろん、実際の日本の様子など知るべくも無い。おそらくは、彼らは自分たちなりに「存在しない」日本を思い描いていたはずである。
私たちが、「存在しない」メイドのイメージを膨らませて愉しんだとて、そうおかしな事ではないだろう。