『埼玉県立歴史と民俗の博物館』の特別展示室では、企画展として『ヒーロー参上』と題した催し物を行っている。
内容は博物館らしく、源義経といった歴史上のヒーローたちの錦絵や屏風絵をコーナーの初めに展示し、明治期の庶民のヒーローであった大相撲の力士たちの絵を経て、昭和時代のテレビ番組でのヒーロー『月光仮面』や『怪傑ハリマオ』、『レッドバロン』『光速エスパー』『シルバー仮面』などの写真パネルやフィギュアが展示されている。
展示数は決して多くないが、実際の撮影に使われた『月光仮面』のサングラスが、唯一残った当時の貴重な衣装の一部として特別展示室の中心に置かれており、これは必見であろう。
また、作品解説の中で「勧善懲悪」という言葉について触れられているのだが、この言葉を誤解していることに今更ながらに気付かされた。
よく「勧善懲悪」の前には枕詞のように「単純な」と付けられ、子供騙しでないとされる作品を持ち上げるために、否定的に用いられる。
しかし、よくよく字面を見れば、「善を勧めて、悪を懲らしめる」という、極めてストイックかつ実行するには難しい意味を含んでいる。
自己を絶対的な善とはせず、悪を一方的に倒すというのとは意味合いが違うのだ。
『月光仮面』の原作者でもある川内康範は、生前に「ヒーローは“正義”そのものではなく、あくまで“正義の味方”である」というような意味のことを語っていたとされる。
とすると、テレビ黎明期から現代に至るまで、単純に善と悪の戦いを描いた作品の方が、むしろ思い浮かべるのが難しく、展示された作品はどれも、まさしく「勧善懲悪」で決して子供騙しの作品では無かったように思える。
なお、特別展示室の脇では、日替わりで幾つかの作品を19インチのテレビで鑑賞することが出来る。
あえて大きなスクリーンではなく、自分の家の個室でもなく、街頭テレビの気分で観てみるのも良いだろう。
この企画展は、8月31日(火)まで(月曜日休館)の、9時~17時 (入館は16時30分まで)。一般400円、高校・大学生200円、中学生以下と65歳以上は無料。
▼企画展の脇に展示されている『マジンガーZ』に登場する『飛行要塞グール』(左)と『海底要塞ブード』(右)
▼企画展の脇でビデオ上映されている作品の日程スケジュール
(スケジュールは変更になることがあります。また、中止になる場合もあります)