執筆 : 星雲御剣/注釈 : 清水銀嶺
6:エヴァンゲリオンの『魂』
『新世紀エヴァンゲリオン』は、『マジンガーZ』(※注1)や『機動戦士ガンダム』などと同様のロボットアニメに分類される作品である。
TV版の放映以来、比較的順調な(※補1)大ヒットを続け、特にパチンコ化されてからの一般認知度の高さは特筆モノであり、以降、キャラクター物のパチンコ化が恒例化したのはご存じの通りである。
では、エヴァはなぜこんなに売れるのであろうか?
もちろん、版元の巧みなマーケティング戦略は存在するのだが、それ以前に、作品そのものにオタクを惹きつける『系譜』と『新機軸』、この二つがあったからに他ならない。
『新機軸』については話は簡単で、ビジュアル的なデザインコンセプトが斬新だったのである。主役メカのエヴァンゲリオンのデザインにそれは顕著で、「猫背で痩せすぎ」という体格は、神経症的な高速型の敵には使われても、それまでの主役メカには選択されないラインであった。
キャラクターデザインもまた斬新な点があり、およそ、老若男女全てのキャラクターにおいて「性差」「生活」「世代」と言ったある種の『臭い』が、かなり高度に意図的に取捨選択されている物となっている(※補2)。
物語進行のあり方もまた斬新であり、毎回のように襲いかかってくる敵(使徒)には人格的な描写は一切無く、例えば『マジンガーZ』に代表される『専守防衛系(※補3)』の、ある種の究極系の趣がある。
しかし、 これら一見すると『斬新』な部分こそが、実はある名作の『系譜』の上に成り立っており、その『魂』を引き継いで、時代の気分に合わせたフレーバーを加えた物なのである。では、その『過去の名作』とは?
それは『マジンガー』や『ガンダム』ではなく……実は、『帰ってきたウルトラマン』(※注2)なのだ。
(以下次回に続く)
※注1……『マジンガーZ』
※注2……『帰ってきたウルトラマン』
※補1
ロボットアニメのヒット作は、放映当時から話題作であるということがほとんど無い。
あのガンダムでさえ、TV放映時には不人気で番組打ち切りの憂き目に合っているのだ。
視聴者の注目度合いに関して、関連商品の認知・浸透度と、視聴率への反映には、どうしても一定のタイムラグがあるからだと言われており、最近はそれを織り込んだ放映スケジュールを取る事が多い。
一方、エヴァのTV版最終回は、いかにも不人気で打ち切りされた感じが漂っているが、あれは「人気作は最初打ち切られる」というジンクスを、パロディ的に意図的に織り込んでいたためではないか? と言われていた時期があった。
いずれにせよ、結果的に、あの最終回が放映終了後の話題作りに一役買う事になる。
※補2
キャラクターデザインを手がけた貞本義行氏は、「シンジはナディアの男の子版」と言う旨の発言をしたことがある。この例に顕著なように、『エヴァンゲリオン』のメインキャラクターは、全体に、ユニセックス的にデザインされた基本形に、セックスアピール的なパーツを後付して仕上げているような節がある。幅広い層に支持されることを狙う場合のデザイン論としては基礎的な考え方であるが、そもそもがターゲット層を絞り込んでいるはずのロボット物では、あそこまでこの手法を徹底した例は他になかった。
※補3
主人公サイドが、非常に強力な武装を保有しているのに、守り一辺倒で攻めに回らない作劇。憲法第9条的な戦後の日本人的価値観には大変合致しているため、ロボット物はこのパターンを踏襲することが多い。
特に『エヴァンゲリオン』は、年季の入ったファンの間からは『ドクター・ヘル不在のマジンガーZ』と言われたこともある程で、敵である『使徒』に、思想的バックボーンを持つ首領的なキャラクターも、その本拠地も設定されない「謎の存在」であることを徹底し(後半の使徒に至っては、デザイン上「敵だと分かれば良い単なる記号」にまでシンプル化された程)、主人公サイドは専守防衛に回るしかないという究極の状況設定に成功している。
故に、使徒の代弁者としての『渚カヲル』が出てきたとき、あのドラマは終わりを迎えた……という見方もできる。
◆次回は「7:エヴァにも見えるウルトラの星(前編)」
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◆星雲御剣(せいうん みつるぎ)
80年代後期ファミコンブームの頃から各ゲーム誌で攻略記事を担当。
ゲームのみならず、マンガやアニメにも造詣が深く、某大手出版社の入社試験では、面接官に聞かれたウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムの顔と名前を全部言い当てたのが合格の最大の決め手になった、と言われている(笑)。
独特のオタク感を実生活に反映させる生き様を模索、実践する求道者。
◆清水銀嶺(しみず ぎんれい)
唐沢俊一氏主宰の『文筆業サバイバル塾』第一期塾生。
既刊『メイド喫茶で会いましょう』(共著)
『最新!萌え情報 Pick Up!』にて記事を執筆。