【去人の星】 今 敏監督が逝去

 今 敏(こん さとし)監督が、8月24日に膵臓癌で逝去した。
 享年46。
 今監督の代表作に挙げられる『パーフェクトブルー』や『千年女優』(文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞)、『東京ゴッドファーザーズ』(東京国際アニメフェア2004アニメ映画部門最優秀作品賞)に『パプリカ』(ベネチア国際映画祭出品)と、そのいずれも個人的には好きな作品ではなかった。
 好きな作品ではなかったが、「素晴らしい作品」だったことには間違いない。
 ご本人は自身を、世間に合わせることの出来ないアウトローのように語っていたけれど、アニメーションの仕事ではレイアウトを担当することが多かったためか、その創作手法は手堅く、「もっとぶっ飛んだ物語にしてもいいのに」と思えるアイデアやシチュエーションをカッチリと自分の設定した枠の中に収め、絵的にも破綻することのない緻密な描写で表現していた。
 その系譜は、漫画家の大友克洋のスタイルを受け継いでいると云えるだろう。
 実際、大友克洋のアシスタントも経験しており、大友克洋監修のアニメ映画『MEMORIES -彼女の想いで-』にも参加していた。
 だからこそ、国外での評価が高かったのではないかと思える。
 そんな今監督は、もうすぐ「今 敏」というジャンルを確立するはずだった。
 これまでの作品は、続けて観ると、そろそろ「マンネリ」と言われるような流れの中にあったと思う。
 しかし、新作として製作に入っていた『夢見る機械』でもまた「いつもの」と言われるならば、それはもう紛れもなく「今 敏監督にしか出来ない」作品であり、今監督自身が一つのジャンルとして存在感を示しただろう。
 それを目前にして病魔に連れ去られてしまったことが、本当に残念でならない。
 なによりも、ご本人の無念は察するに余りある。
 今 敏監督の、ご冥福をお祈りする。


今 敏監督

略歴
 2010年8月24日、膵臓癌により逝去。享年46。
 1987年に大学を卒業して、講談社より漫画家としてデビュー。
 1991年からアニメに携わり、初監督を務めた『PERFECT BLUE』(竹内義和原作)で高い評価を得て、国内外で常に新作が期待されるほどになった。

LINEで送る
Pocket

 

【去人の星】 今 敏監督が逝去への1件のコメント

  1. アバター 清水 銀嶺
    清水 銀嶺 コメント投稿者

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/4.0; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C)
     今 敏監督が生前に出演していたNHK『トップランナー』の放送回が9月25日(土)に再放送されるそうです。
     『トップランナー ~Guest 今 敏追悼再放送(仮)~』として再放送されるのは、2005年2月20日に放送された『トップランナー Guest 今 敏』で、当時の司会者は武田真治と本上まなみ、ナレーションは田中敦子。
     放送時間は未定なので、チェックされる方は忘れずに。